■「約束にござる」号泣必至の「一国傾城篇」

 最後に紹介するのは、多くのファンが号泣したであろう「一国傾城篇」だ。アニメでは第257話から261話にかけて放送された、切なくも美しいストーリーである。

 かつて、その美しさから天女にも優ると言われた伝説の花魁・鈴蘭。今は老婆となった彼女から、万事屋は人探しの依頼を受ける。

 その人物とは、かつての鈴蘭の想い人だった。自らの死期が近いことを悟った鈴蘭は、遠い昔、自分を迎えに来てくれると約束した男性を探し、再会を願っていたのだ。

 調査を開始した万事屋一行だったが、その過程で先代将軍・徳川定々と敵対する。さらに定々に仕える集団の中には、かつて攘夷戦争の際、銀時たちを敗った強敵・朧の姿があった。

 鈴蘭が探していた男性は、将軍や姫の世話役を務めた“じいや”こと六転舞蔵だった。かつて定々のむごい仕打ちに苦しむ鈴蘭を慰めるうち、2人は恋に落ちる。しかしそのことを知った定々の怒りを買い、舞蔵は腕を斬り落とされてしまった。

 銀時の師・吉田松陽の死の真相、そして舞蔵の身に起きた悲劇を知った銀時たち。窮地に追い詰められながらも最後には朧を打ち倒し、舞蔵を鈴蘭の元へと向かわせる。

 約束の場所で待っていた鈴蘭は、すでに虫の息だった。そして、満月の下、2人はかつての姿を夢見る。舞蔵はないはずの両腕で鈴蘭を抱きかかえ、かつて望んだように彼女を連れ去っていった……。

 松陽の過去や攘夷戦争の因縁といった、物語の根幹に触れるシリアスな展開。その一方、舞蔵と鈴蘭の切なすぎるラブストーリーという、2つの重厚なテーマが描かれた「一国傾城篇」。これまでの『銀魂』の常識を覆す、涙なくしては見られないシリーズだった。

 

 実は紹介しきれないほど、『銀魂』には読者の胸を打つシリアスな回が数多くある。ギャグとシリアスの見事な緩急こそが、『銀魂』の大きな魅力の1つだろう。

 あなたが思い浮かべたのは、どのエピソードだっただろうか。

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