実父から存在否定、85日間の飢餓…『ONE PIECE』麦わらの一味で最も過酷な過去を持つ男!? サンジの「壮絶すぎる半生」の画像
『ONE PIECE Log Collection “WEDDING"』[DVD] (エイベックス・ピクチャーズ) ©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

 国民的人気を誇る尾田栄一郎氏の海賊漫画『ONE PIECE』には、つらく悲しい過去を持つキャラクターが多い。回想エピソードで明かされる悲劇は読者の胸を締め付け、主人公のモンキー・D・ルフィら“麦わらの一味”が過去の因縁を粉砕するカタルシスに感動させられる。

 当の“麦わらの一味”のメンバーもまた、悲しい過去を背負う者ばかりだ。誰の過去が一番悲惨であるかは一概に言えないが、「最も波乱万丈な人生を送ってきたのは誰か」と問われれば、コックであるサンジの名が挙がるのではないだろうか。

 サンジは少年時代に二度の悲劇を経験し、仲間になった後でさえも、その過去が原因で脱退騒動を起こしている。その半生は、一味でも屈指の苦労人と呼べるだろう。

 今回は、サンジがこれまで歩んできた壮絶すぎる半生について振り返ってみたい。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■実の父から「生まれなかった」ことにされた幼少期

 サンジの人生は、生まれる前から苦難に満ちていた。

 サンジの父であり科学戦闘国家・ジェルマ王国の国王、ヴィンスモーク・ジャッジは、戦争に勝つための戦闘マシンとして子どもを求めた。そして非道な計画により、サンジを含む5人の兄弟は、生まれる前に「血統因子」の操作による強化人間化と感情の排除処置を施されたのである。

 しかし、母であるヴィンスモーク・ソラの必死の抵抗により、サンジだけは優しい心を持った人間として生を受けた。だが、その人間らしさこそが、父や兄弟から「失敗作」と蔑まれる原因となり、ついには実の父から「生まれなかった」子どもとして扱われ、鉄仮面を被せられて地下に幽閉されてしまう。「よわく生まれでごめんなざい…!!!」と、涙ながらにジャッジに謝る幼いサンジの心境を思うと、あまりにもつらい。

 その後、国を出奔する時も、サンジはジャッジから「(自分の意思でいなくなってくれて)助かるよ……」と、冷たい言葉を投げかけられている。当時わずか7歳か8歳と思われるサンジの壮絶な過去に、当時の読者たちは絶句したものだ。

 そんな悲惨な幼少期に救いがあったとすれば、病床の母・ソラとの交流だろう。自身の作った不格好な手作り弁当を喜んでくれた優しい母の精一杯の愛情は、短いながらも、幼いサンジにはかけがえのない時間となった。あの日々が、今のサンジのルーツになっているのだろう。

■85日の飢えと闘い、恩人は足を…ゼフとの遭難生活

 ジェルマ王国から脱走し、客船・オービット号でコック見習いとして第2の人生を始めたサンジ。そこで彼は「偉大なる航路(グランドライン)」から帰ってきた大海賊にして、後の恩師となる「赫足のゼフ」と出会う。

 2人は海難事故によって食料が全く採れない岩山に打ち上げられてしまい、わずかな食料とともにアテのない助けを待ち続けることに。幽閉されたときも食事に困ることはなかったサンジだが、ここに来て食事すら満足にとれない遭難を経験するのだ。

 普通に食べれば5日で消費する食料をサンジは20日分にし、空腹は溜まった雨水でごまかす生活を続ける。しかし、20日どころか70日を超えても助けは来ない。まだ幼いサンジはひどく痩せこけ、食料を求めて包丁を片手にゼフを襲おうとする。

 だがそこでサンジが目撃したのは、右足を失ったゼフの姿だった。彼はサンジを生かすために食料をすべて渡し、自分は片足を砕き、それを食べて生き延びていたのである。自分が殺そうとした相手が、実は自分を生かそうとしてくれた事実を知ったサンジは涙し、飢えの苦しみとゼフの偉大さを思い知る。

 この真実を知ってからさらに15日後、遭難から数えれば85日目にして、サンジはゼフとともに奇跡的に救助される。

 その後サンジはルフィと出会うまで、彼と共に開業した海上レストラン「バラティエ」で、副料理長としてゼフへの恩返しに尽力する。実の父・ジャッジからは与えられなかった本物の“親子の愛”を、ゼフから与えてもらったのだ。

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