■ジャイアンはイマイチ? 他キャラの笑える毒舌
せっかくなので、他のキャラのユーモラスな毒舌も見てみよう。
先ほど、のび太に理不尽な毒舌を連発されたしずかも、実は負けじとやり返している。
「ロビンソンクルーソーセット」のエピソードで、のび太と2人で無人島に漂流した時、「ママー!!」と思わず泣いてしまうしずか。実は漂流の原因を作った張本人であるのび太に「安心しなさい、ぼくがついてる」と凛々しく励まされると、「だから心配なのよ」と痛烈なカウンターを返す。不安で泣いている小学生女子とは思えない鋭さだ。
スネ夫も見逃せない。出木杉の成績が落ち込んだときには「のび太をみろ。しょっちゅう0点でも、明るく生きてる」と言い、遠回しにのび太を馬鹿にするテクニックを披露。
また「のろいのカメラ」のエピソードでは、カンカンに怒ったドラえもんを見て「きみの顔は、おこってもわらっても、おもしろい顔だね」と、茶化したりもする。
いつも嫌味ばかりのスネ夫は、毒舌の数こそ少ないが、その質においてはほかのキャラクターに引けをとらないようだ。
ちなみにジャイアンだが、彼がユーモラスな毒舌を使うことはあまりない。「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの…な!!」という有名なセリフからもわかるように、もっとストレートに暴言を連発するからだ。誰よりも腕力に自身を持つジャイアンにとって、遠回しな毒舌や皮肉は必要がないのかもしれない。
原作『ドラえもん』の、ユーモアあふれる毒舌を見てきた。その洗練された言い回しは大人が読んでもつい感心させられるものであり、機会があれば思わず使ってみたくなるほどオシャレだ。これはきっと『ドラえもん』という作品が、子どもの感性を侮らず、むしろ「子どもが相手だから」と真摯に取り組まれ、創り上げられたからこそであろう。
世代を超えて楽しめるウィットに富んだ毒舌の数々に注目して、読み返してみてはいかがだろうか。