
大ヒット公開中の映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。8月18日には、「この一突きに全てをのせて——!!」というキャッチコピーとともに、鬼殺隊の蟲柱・胡蝶しのぶと上弦の弐の鬼・童磨が激突する姿が描かれている第4弾キービジュアルが公開された。
映画は公開60日間で観客動員2304万2671人、興行収入330億5606万6300円を記録し、国内の歴代興行収入ランキングでは『千と千尋の神隠し』を抜いて歴代2位となった(9月15日時点)。
『鬼滅の刃』といえば、しのぶをはじめとして、主人公・竈門炭治郎の妹である禰󠄀豆子、恋柱・甘露寺蜜璃、そして、しのぶの継子である栗花落カナヲなど、女性キャラも男性に負けじと最前線で戦い、心身ともに強いのが印象的だ。
中でも、鬼でありながら鬼舞辻無惨にかけられた“呪い”を自力で解除し、ミステリアスな雰囲気を放つ珠世は、他のキャラクターとは一線を画す特別な存在感を放っている。これまで彼女についてメインで語られることは少なかったが、柱稽古編のアニメ最終話では決死の作戦で無惨に一矢報いようと奮闘した姿が記憶に新しい。
今回は、物語における影の功労者といえる珠世のこれまでの活躍と、彼女が抱き続けてきた思いについて振り返りたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■異質の鬼・珠世の登場と炭治郎との出会い
珠世が初登場したのは、炭治郎が任務で訪れた浅草で、初めて鬼の始祖・無惨と遭遇した時のこと。
元々は鬼でありながら、無惨を倒すためにひっそりと医者として活動していた珠世は、炭治郎が無惨によって鬼にされた人に対しても「人」という言葉を使い、扱ったことに感銘を受け、彼に心を開いた。
彼女が使う血鬼術・惑血は、自らの血を媒介とする幻惑系の能力である。その術は、浅草で鬼と化した男性を庇う炭治郎を助ける際に、初披露された。アニメでの血鬼術でのエフェクトは、無数の花が一帯を漂うような華麗なものであり、彼女の妖しい魅力を一層引き立てていた。
お互いの素性を詳しく知らない段階で、自身の危険を顧みず咄嗟に炭治郎を助けたところにこそ、彼女の優しく善良な性格が現れていると言えるだろう。
自力で無惨の呪いを解いたこと。人間を襲わず、少量の血で生き長らえることができること。愈史郎が唯一の成功例ではあるが、人間を鬼にすることができたことなど、鬼としては極めて異例な存在である珠世。彼女ほど変わった鬼は、この後の長い物語でもいっさい登場しなかった。
彼女の存在の異質さは物語序盤から際立っていたが、それは珠世と愈史郎が、作者である吾峠呼世晴氏の『鬼滅の刃』の原型となった作品『過狩り狩り』にも登場していることと、関係しているのだろうか。