
松本零士さんの『銀河鉄道999』は、主人公の少年・星野鉄郎と、謎の美女メーテルが宇宙を旅し、数多の星に降り立つ話だ。鉄郎はさまざまな人との出会いや経験を通じて、たくましい大人へと成長していく。
しかし、彼らが訪れる星々は美しい景観や独自の文化を持つ一方、人間にとってはあまりにも過酷な環境を持つ場所も少なくない。ある星では人間の身体が自由を奪われ、またある星では想像を絶する恐ろしいガスにより、命の危機に晒されるケースさえあるのだ。
ここでは『銀河鉄道999』に登場する星の中でも、そこに住むことで人間の体が蝕まれてしまう、過酷な星々を紹介したい。
※本記事には作品の内容を含みます
■弱い太陽の下で体力が地球人の100分の1に…「霧の都のカスミ」
「霧の都のカスミ」に登場する惑星の人間は、過酷な環境下で生活してきたことで、地球人と比べて体力がたったの100分の1しかない。
「霧の都」という駅に到着した999号。そこは2つの惑星がくっついたいびつな形状の星で、常に薄暗い。その星の住人は、陽の光に弱くて昼間に働くことができず、雨の日か夜間にしか活動できないという。
ホテルに滞在した鉄郎とメーテルは、影郎とカスミというカップルにパスを奪われ、鉄郎は銃で撃たれてしまう。しかし鉄郎は撃たれても平然としており、反対に撃った2人は逃走しただけで疲れてしまい、虫の息であった。この星は弱々しい太陽の下で時間のゆるみに揉まれているため、住人は極端に体力がないのだという。
その後、パスを盗んだ影郎とカスミはなんとか鉄郎やメーテルから逃げ切り、999号への乗車に成功する。しかし体力のない2人は発車のショックに耐えきれず心臓麻痺を起こし、共に亡くなってしまうのであった。
■特殊なガスで化石となってしまった人間たち…「化石の戦士」
「化石の戦士」は、その星に移住してきた人間が化石になってしまったという恐ろしいエピソードだ。
ある日、列車妨害を受け、衝撃と共に停車した999号。そこは「化石の星」という駅で、自然に形成されたとされる膨大な人々の顔が彫られた岩があった。鉄郎はそこで“化石泥棒”に間違えられ、化石を守る男に切りつけられたうえ、パスを盗まれてしまう。パスを取り返しに男のもとへ向かった鉄郎は、再び男と対決して彼を撃つ。
倒れた男は、自分の過去のことを話し始める。彼はもともと仲間たちとこの星にやってきたが、近づいてくるガス雲の正体を暴くため、一人だけ宇宙船で調査へ出たという。
しかし、そのガスは恐るべき“化石化ガス雲”であり、地上に残った仲間はガスを浴び、みんな化石になってしまった。それ以来、彼は化石を盗まれないようこの星で番人をし、いつの日か化石になった仲間をもとに戻したいと願っていた。
男は、この星を出たいという本心を隠して、鉄郎にわざと撃たれた。そして最期は“いつか化石を元に戻してほしい”と鉄郎に願いを託し、息を引き取るのだった。
対話の中で「か、化石化ガスぅ? そんな夢みたいなことが!?」と、驚く鉄郎に対し「夢みたいな、科学で立証できないことが宇宙にはよくある」と答えた男。
広い宇宙では、私たちが想像もできないようなことが、実際に起きているのかもしれない。温暖化が進み予想もできない災害が頻発している現在、将来はひょっとしたらこのようなガスが地球上を覆い尽くすこともありえなくはないのだ。