■メインキャラだけではない…城戸沙織の馬になっていた邪武

 辛い修行を経験した青銅聖闘士のメンバーだが、幼少期に過酷な思い出を持っているのはメインキャラクターだけではない。登場回数の少ないサブキャラの中にも、かわいそうな幼少期を過ごした者がいる。その1人がユニコーン邪武だ。

 邪武は星矢たちと同じく、グラード財団の児童養護施設で育った。ある日、財団のお嬢様である城戸沙織が「だれか馬になりなさい!!」と、鞭を持って言い放つ。そして沙織は星矢に対し馬になるよう命じるが、「馬のマネなんかやりたくねえ!!」と、彼はこれに反抗し、いくら鞭で打たれようとも応じない。

 するとここで星矢を蹴り飛ばし「お嬢様オレが馬になります!!」と、割って入ったのが邪武だった。彼は沙織の命令通りに四つん這いになり、彼女を背に乗せ、鞭で叩かれながら走り回るという屈辱的な役割を受け入れたのである。その後、手や膝にケガを負った邪武は、悔しさや情けなさからか、1人でグスっと涙を流している。

 ほかのメンバーとは異なり、邪武は昔から沙織の言うことを聞き、どのような要望にも応じていた。そしてのちにアルジェリアのオランへ修行に行き、見事、聖闘士となって帰っている。

 これほどまでに沙織に忠実かつ幼少期から苦労している一途なキャラでありながら、なぜか青銅聖闘士として主要な活躍の場は与えられていない邪武。そう考えると、少し気の毒な立ち位置に思える存在である。

 

 断崖絶壁での腹筋1000回、理不尽な師匠からの暴力、忠誠心ゆえの屈辱……など、『聖闘士星矢』に登場する戦士たちは実に過酷な幼少期を送ってきた。今、読み返してみると、漫画の世界とはいえども、あまりの不憫さに胸が痛くなってしまう。

 しかし、そんな過酷な修行を積んできた彼らだからこそ、何度倒れても立ち上がる強靭な精神力と肉体を手に入れることができたのだ。そして何度死んでも復活する、真の聖闘士へと成長したのである。

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