■敵という立場だがコナンの正体を知るベルモット

 黒ずくめの組織の一員であるベルモットにコナンの正体がバレているのも有名だが、こちらもタイミングにかんしては曖昧だ。

 そのため推測するしかないのだが、有力なのがベルモットの初登場回「黒の組織との再会」(コミックス24巻収録)である。このエピソードでは灰原哀が狙われてしまい、コナンが自分の眼鏡を貸して助けるという状況になった。

 その時コナンはパーティー会場で、女優のクリス・ヴィンヤードとして変装していたベルモットに、眼鏡無しの姿を見られたと思われる。ベルモットは新一の母親・工藤有希子が女優として活躍していた頃、彼女と仲良くしていた。そのため有希子が家族を紹介したり、写真を見せたりしていたとしたら、新一の小さい頃の姿を知っているはずだ。

 そこからベルモットはコナンと新一を結びつけたのかもしれない。実際、事件の最後には「ちょっと引っ掛かる事もあるしね…」という意味深な言葉を残している。さらに「黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー」(コミックス42巻収録)では、工藤新一宛に招待状を送っているにも関わらず、中の手紙は”親愛なる江戸川コナン様”と書き出していた。

 これがコナンの正体を知っているぞ、というメッセージであることは確実だろう。

■コナンのうっかりミスがバレにつながった赤井秀一

 最後は、赤井秀一にどうやってバレたのかを見ていこう。彼もまた、いつの間にかコナンが新一だと知っているような振る舞いを見せている。コナンが赤井の死を偽装し、沖矢昴として生活させる際に両親まで協力をさせているところからも、コナンはみずから赤井に正体を明かしたのか? とすら思ってしまう。

 赤井がコナンの正体を確信したのは、コナンが変声機を使って会話をしているのを見た時だろう。
 「工藤優作の未解決事件[コールド・ケース]」(コミックス77巻収録)でコナンは、沖矢が近くにいると気付かず、うっかり蝶ネクタイ型変声機を使って新一の声色を出してしまっていた。それを陰で見ていた沖矢が「なるほど… そういう事か…」とひとり納得する様子から、そこで気付いたことが察せられる。

 それまでにも赤井は、コナンがただの小学生ではないのは分かっていたが、新一と結びつけてはいなかった。会話の中で新一について語られることがなかったからだ。コナンがもう少し気を付けて行動していれば、こんなにあっさりバレはしなかったかもしれない……。

 

 こうして振り返ってみると、コナンの正体が明確にバレたシーンの描写は意外にも少なく、ほとんどが匂わせた状況だ。また、黒ずくめの組織のピスコやアイリッシュのように、バレたもののその人物が死亡してギリギリセーフというパターンもある。

 正体がバレるのにはリスクもあるが、それが味方であれば、秘密を共有した上で協力できるので悪いことばかりではないだろう。

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