■優等生ヒロインと入れ替わった“不良男子”『放課後』観月ありさ

 1992年、フジテレビ系「ボクたちのドラマシリーズ」第1作として放送された『放課後』。

 当時15歳の観月ありささんの連続ドラマ初主演作であり、いしだ壱成さんの俳優デビュー作でもある。筆者は40代だが、本作は全5話という短さにもかかわらず、「入れ替わり作品」として、強烈に記憶に残っている作品だ。

 物語は、優等生のお嬢様・秋山あずさ(観月さん)と、バンド活動に明け暮れる不良少年・高本浩平(いしださん)が揃って落雷事故で気絶し、それをきっかけに入れ替わるところから始まる。

 目覚めた“あずさの姿をした浩平”は、その変化に気づかぬまま帰宅。自室で着替えを始めたところでようやく異変を察し、「ちくしょー、どういうことだよ!」と体をまさぐりながら慌てふためくシーンは、視聴者を一気に物語に引き込んだ。

 その後も観月さんは、ガニ股歩きや粗暴な口調、勇ましい表情などで“不良少年”を全身で表現。

 中でも印象的だったのが、いけすかない生徒会長・本庄司(武田真治さん)を殴り飛ばすシーンだ。

 仲間を馬鹿にする生徒会長の肩をぽんぽんと叩き、振り向いた瞬間に「ざけんじゃねぇよ!」と一撃。それまでの清純で可憐な観月さんのイメージを覆す名演技だった。

 ドラマは、バンド活動や恋愛といった青春模様を織り交ぜながら、クリスマスパーティーで衝撃的な結末を迎える。

 短い放送回数ながらも、観月さん、そして相方であるいしだ壱成さんの卓越した演技により、“入れ替わり”ドラマの魅力を凝縮した作品となっている。

 

 綾瀬はるかさんの冷徹な殺人事件の容疑者、新垣結衣さんのコミカルなおじさん女子高生、観月ありささんの反骨心あふれる不良少年。いずれも、清楚な外見と内面のギャップを巧みに演じ切り、観る者を自然に納得させた。

 彼女たちが“演じている”という事実はもちろん分かってはいるが、気づけば、不思議と“その人”に見えてくる。その説得力こそが物語の完成度を左右し、人物の中身が入れ替わる作品ならではの醍醐味であるといえるのだろう。

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