
現在大ヒット公開中の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。キービジュアルでは、上弦の参・猗窩座に主人公・竈門炭治郎と、水柱・冨岡義勇が対峙している様子が描かれている。
さて、物語第1話「残酷」から登場している義勇は、鬼になったばかりの妹・竈門禰󠄀豆子に襲われる炭治郎に対し、「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」と一喝。その後、炭治郎のとっさの機転と兄妹の絆を目の当たりにして、2人を育手である鱗滝左近次に紹介するというファインプレーを果たした。
さらに那田蜘蛛山編の後におこなわれた柱合会議では、他の柱たちが「鬼殺隊の規律違反」として一斉に禰󠄀豆子を殺そうとする中、“もしも禰豆子が人に害をなせば、師である鱗滝とともに切腹する”という旨を手紙で表明し、その命を保証した。
物語序盤から炭治郎を助けてくれたこともあり、義勇はクールで頼れる印象で読者からの人気も高い。しかしその一方、彼がどうも周囲の柱たちとの間に壁を持っており、どこか浮いている感じが気になる読者も多いのではないだろうか。
今回は、冨岡義勇という人物が、なぜ口数が少なく、あのような性格・人との接し方になったのか、その背景をあらためて振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■「だからみんなに嫌われるんですよ」言葉足らずが招いた柱たちとの軋轢
もっとも早い段階で義勇と周囲との関係性に違和感を感じさせたのは、那田蜘蛛山編での蟲柱・胡蝶しのぶとのやり取りだろう。
しのぶが問答無用で禰󠄀豆子を殺そうとした際、言葉もなくそれを制止した義勇に対し、しのぶは「そんなだからみんなに嫌われるんですよ」と、痛烈に告げている。これに対して義勇は「俺は嫌われてない」と真顔で否定していたが、この時は単に2人の仲が良くなく、しのぶが義勇に意地悪を言っているだけのような気もした。
しかし、その後の柱合会議でも義勇が孤立している姿から、さらにこの違和感が確信に変わった人も多いだろう。
あらためて那田蜘蛛山編で炭治郎と禰豆子を逃がし、しのぶを足止めしているシーンを振り返ると、彼女の“どういうつもりなのか?”、“なんとか言ったらどうか?”という問いに対し、しばらく無言を続けたあと、突然2年前の話をしようとし、“そんなところから長々と話されてても困る”と、嫌がらせだと思われ、イラつかれている。これも、これまでの義勇の態度のせいだと思えば、納得ができる。
義勇は必要以上に多くを語らず、むしろ言葉が足りなすぎることで、周囲から誤解されているのだ。組織に属する者としては致命的な欠陥とも言えるだろう。
「刀鍛冶の里編」を経た後の柱合会議では、稽古への参加を促された際、「俺はお前たちとは違う」と傲慢ともとれる発言をして、風柱・不死川実弥からの怒りを買っていた。
彼のコミュニケーションの拙さが一番分かりやすいのがこのシーンだが、しかし、彼がこのような性格になってしまったのには、その過去が深く関係していた。