■伝説を遺した「釜茹での刑」と不屈の意志「光月おでん」
1997年から連載が始まった、尾田栄一郎氏の国民的漫画『ONE PIECE』。「ワノ国編」における中心人物・光月おでんの最期も、思わず目を覆いたくなるようなものであった。
ワノ国の九里大名であり、将軍の跡目であったおでんは、カイドウや黒炭オロチの圧政に最後まで抗った伝説の侍だ。
反逆の末に捕らえられた彼は「釜茹での刑」に処されることとなる。しかしおでんは、共に捕らえられた家臣・赤鞘九人男の命を救うため、自ら灼熱の油が煮えたぎる釜に入り、彼らを板に乗せて頭上に掲げ続けた。
“1時間耐え抜けば部下たちの命を助ける”というオロチとの約束を信じ、常人であれば一瞬で命を落とすほどの熱さに耐えながら、おでんは豪快に笑い続けた。そして、見事に耐え抜いてみせる。
だが、その約束は無情にも破られ、最期はカイドウによる銃撃により命を落とし、壮絶な生涯に幕を下ろすこととなる。
おでんの死はワノ国にとって大きな損失であったが、その不屈の精神と生きざまは後の世代に希望を残し、その後、20年の時を経て、カイドウ討ち入りへと繋がる大きな原動力となったのである。
このように『週刊少年ジャンプ』の作品では、キャラクターの壮絶な死がたびたび描かれている。
これらの死は、単に読者を驚愕させるだけではない。それぞれのキャラクターが貫いた信念や、理不尽な運命への抵抗、そして、残された者たちへの影響を描き出すことで、物語により深みを与えてきた。
だからこそ、彼らの最期は読者の心に忘れられない傷跡として、そして感動として刻まれ続けるのであろう。