
『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されるバトル漫画の魅力は、熱い戦いや友情のドラマだけではない。時には、読者の心を揺さぶるキャラクターの「死」のシーンも数多く存在する。
なかでも、読者が「こんな最期は見たくなかった」と、思わず目を背けたくなるような壮絶な死に方を迎えたキャラクターたちは、物語に大きな衝撃を与えるとともに強烈な記憶として残り続ける。
理不尽で救いのない結末、仲間を守るための自己犠牲、あるいは無惨に散る姿……。それぞれの死は作品のターニングポイントとなり、読者に深いトラウマさえ植え付けてきた。
そこで今回は、忘れられない『ジャンプ』名キャラたちの壮絶な最期を振り返っていきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■『HUNTER×HUNTER』悲劇に巻き込まれたハンター「ポックル」
1998年から連載が続く、冨樫義博氏による『HUNTER×HUNTER』。数あるエピソードの中でも人気の高い「キメラ=アント編」において、多くの読者に強烈なトラウマを残したのが、ハンターの「ポックル」の死である。
ポックルは第287期ハンター試験の合格者で主人公・ゴン=フリークスと同期であり、初期に描かれたハンター試験から登場している馴染み深いキャラクターの1人である。
再び登場した「キメラ=アント編」で、彼はNGL(ネオグリーンライフ)の調査隊の一員としてキメラ=アントの生息地に潜入する。だが、王直属護衛軍の一人・ネフェルピトーに捕らえられてしまうのだ。
そこで待っていたのは、死よりも残酷な運命だった。ネフェルピトーは自身の念能力「玩具修理者(ドクターブライス)」で、ポックルを生かしたまま彼の脳を直接操作し、念能力についての知識を根こそぎ引き出したのである。
脳を針のようなもので探られる生々しい音とともに、「あっ あっ」と言いながらも念の知識を語り続けるポックルの描写は非常に凄惨で、作中屈指のトラウマシーンとして、今もなお語り草となっているほどだ。
その後、ポックルはキメラ=アントの女王の餌として利用され、悲劇的な最期を遂げることとなった。
この一連のシーンは、まだこの時点では謎が多かった未知の生物「キメラ=アント」の恐ろしさとともに、人間の尊厳が奪われる恐怖を鮮明に描き出している。弱者が強者に蹂躙される世界の非情さを、読者に強烈に突きつけるシーンとなった。
■メタスタシアとの戦いに散った壮絶な最期「志波海燕」
2001年から連載が始まった、久保帯人氏による『BLEACH』でも、読者の涙を誘った悲劇的な死が描かれている。
本作に登場する志波海燕は、護廷十三隊十三番隊の副隊長であり、明るい人柄で隊士からも非常に慕われていた人物だ。作中で登場した時には、すでに故人となっていた海燕。そんな彼の最期は回想シーンで描かれ、その優しさが招いた悲劇として多くの読者の胸を打った。
悲劇の始まりは、妻・志波都を殺した虚(ホロウ)・メタスタシアとの戦いである。メタスタシアは相手の霊体を食らって融合し、支配できる能力を持っていた。ひとたび取り込まれてしまえば、その者は元に戻ることはできない。海燕はこのメタスタシアとの戦闘中、肉体を乗っ取られてしまうのだ。
メタスタシアに完全に支配されてしまった海燕は、自らの意思とは裏腹に、仲間である死神たちに刃を向ける。それは、彼が可愛がっていた部下であり、妹分のような存在であった朽木ルキアに対してもであった。
最終的に海燕は、意識の奥底にあった自らの意識で、自らルキアの斬魄刀にメタスタシアごと身を貫かせる。
「ありがとな お陰で 心は 此処に置いて行ける」暴走を止めてくれたルキアにそう言い残して、海燕は命を落とした。
敬愛する上官を殺してしまったという事実は、ルキアの心に深い傷を残し、その後の物語にも繋がる重要な出来事となるのであった。