■始まりの呼吸の子孫! 時透有一郎

 霞柱・時透無一郎の双子の兄・有一郎は、作中で鬼に襲われて亡くなっている。10歳で両親を亡くした無一郎と有一郎。心優しい無一郎とは対照的に、有一郎は厳しい言動が多く、亡くなった両親に対しても「馬鹿の極み」と言い放つほどだった。

 有一郎との2人きりの生活は息が詰まるようだったと無一郎は回想していたが、鬼に襲われた際には、身を挺して無一郎を守った。腕を落とされて痛みに悶え苦しむ兄を前に、鬼に罵倒され覚醒した無一郎は、家にあった道具のみで鬼を打ちのめし続け、朝日が昇るまで耐えた。

 死の間際、有一郎は「どうか…弟だけは…助けてください…」と神に祈り、弟の無事を願っていた。それまで冷たいと思っていた兄の本音を聞いて無一郎は涙を流すも、この壮絶な体験のショックで、その後、過去の記憶を失くしてしまう。

 その後、産屋敷家に引き取られた無一郎は、刀を握ってからわずか2カ月という驚異的なスピードで柱に上り詰め、以降鬼殺隊として活躍していくことになる。

 刀鍛冶の里編では、上弦の伍・玉壺との戦いの最中、過去の記憶を思い出し、痣を出現させ、たった1人で上弦の鬼を撃破するという目覚ましい活躍を見せた。

 当初から、産屋敷家は無一郎と有一郎が“始まりの呼吸”である日の呼吸の使い手の子孫であることを把握しており、当主の妻・産屋敷あまねは幾度となく彼らの家を訪れ、鬼殺隊へ勧誘していた。

 その素質は、無一郎が若くして柱となったことでも明白だ。そして、おそらく双子の兄である有一郎もまた、無一郎と同等か、もしかしたらそれ以上の力を持っていた可能性もある。

 実際、鬼が家に侵入してきた際にはいち早く反応し、身を挺して無一郎を守っている。弟を守りたい一心で鬼殺隊への入隊を拒んでいたが、彼がもし、あまねの誘いに耳を貸し、2人とも鬼殺隊に入隊していたら、全く違った未来があったかもしれない。

 始まりの呼吸の使い手を先祖にもつ双子の剣士が、連携して戦う姿は、まさに無双であっただろう。その計り知れないポテンシャルを思うと、彼の早すぎる死が惜しまれてならない。

 

 作中では、すでに故人として登場する彼ら。鬼殺隊に入る前に命を落とした者も多いが、断片的に語られるエピソードからは、彼らが計り知れない才能と強さを秘めていたことがうかがえる。

 あまりに強すぎる宿敵・鬼舞辻無惨との最終決戦を前に、ついつい彼らが生きていてくれたらと想像を巡らせてしまうのは、筆者だけではないだろう。だが、彼らの存在があったからこそ、後を継ぐ者たちの目覚ましい活躍に繋がっているのもまた事実である。

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