
1998年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されている、冨樫義博氏の『HUNTER×HUNTER』。
多種多様な念能力を使った駆け引きによるバトルが魅力の本作において、中でもヨークシンシティのオークション会場で明かされた“死後強まる念”の存在は、極めて異彩を放つ。これは、能力者が深い恨みや未練を持ったまま死ぬことで、その念が死後も残り、強化されるという現象だ。
現在連載中の「王位継承編」でも、ベンジャミン=ホイコーロ王子の「星を継ぐもの(ベンジャミンバトン)」や、カミーラ=ホイコーロ王子の「百万回生きた猫(ネコノナマエ)」など、死後強まる念能力が登場しており、今後のストーリーでも重要度が増す可能性も高い。
そこで、これまで登場した“死後強まる念”を振り返り、その特性や強化のされ方について考察していこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■王への忠誠心が骸を動かした…ネフェルピトーの「黒子舞想(テレプシコーラ)」
「キメラ=アント編」に登場した王直属護衛軍の1人、ネフェルピトーが使用する「黒子舞想(テレプシコーラ)」は、“死後強まる念”の恐ろしさを持つ代表的な念能力である。
念人形を出現させて自身を操り、身体能力を限界以上に引き出すこの能力。ピトーが全力で戦うときはこれを使って自らを操作し、戦うスタイルが基本だ。アイザック=ネテロ会長やゴン=フリークスとの戦いでも発動している。
もともと、スペックが高いピトーが自身の限界を突破して戦う能力なのだから、極めてチート級の技といえる。だが、その真価が分かったのは、ゴンとの戦いで頭を潰され、絶命した後のことだった。
再起動した「黒子舞想」は、王への忠誠心をもとにゴンの命を奪うことだけを目的としており、ピトーの骸は意思なき人形と化した。
死後の強化については、どの程度のものだったかを測るのは難しい。なぜなら、実力差があり過ぎて、瞬時にゴンに返り討ちにされてしまったからだ。通常の「黒子舞想」では一度もゴンに攻撃を当てられず、「ジャジャン拳」によって沈められた。
だが、不意打ちだったとはいえ、この時、ピトーはゴンの片腕を簡単に切断している。さらに、ゴンが機能停止させるために放った「ジャジャン拳」は、通常状態のピトーを倒した一撃とは比較にならないほどのものだった。
これらのことから推測すると、“死後強まる念”によってピトーの攻防力は飛躍的にアップしていたと考えられる。
■反則級に強化されたクロロの「番いの破壊者(サンアンドムーン)」
幻影旅団団長のクロロ=ルシルフルがヒソカ=モロウとの死闘で見せた「番いの破壊者(サンアンドムーン)」。この能力は、左手で太陽(プラス)の刻印、右手で月(マイナス)の刻印を押すことで、対象者を爆弾に変える能力だ。起爆スイッチは2つの刻印が触れることであり、爆発の威力を最大値にするには、3〜5秒間ほど触れ続けている必要がある。
もともとは流星街の長老が持っていた能力で、クロロの念能力「盗賊の極意(スキルハンター)」で盗んだものである。通常、盗んだ能力は元の持ち主が死ぬと消滅するのだが、「番いの破壊者」は長老の死亡後にも能力に宿り、“死後強まる念”として残った。
そしてこの能力は、クロロにとって有利な形で強化されることとなる。
本来、「盗賊の極意」は、能力を使用するためには具現化した本を開き、ページを開いていなければならない。しかし、「番いの破壊者」は一度刻印を押しておけば、本を閉じたり消したりしても、その能力が解除されないのだ。
これにより、クロムは自身の持つ他の能力と「番いの破壊者」を併用することができるようになった。元の持ち主である長老の強い意思が反映され、クロロによってより強化がされたレアケースだと言えるだろう。