■アントワネットのためなら死ねる…何度も彼女を救い、人生を捧げたフェルゼン

 独立戦争から帰還し、アントワネットのそばを離れないと決めたフェルゼンは、彼女のために献身的な愛を捧げる。すでに母になっていたアントワネットとは人目を忍んで夜中に逢瀬を重ね、彼女の精神的な支えとなっていた。

 やがてフランス革命が勃発し、国王一家が国民から反感を買うようになると、フェルゼンは地位や財産、祖国を捨ててアントワネットのいるフランスへと駆けつける。

 そして一家の逃亡を手助けするため、不眠不休でオーストリアへの亡命計画を先導。しかし、国王一家は国境手前のヴァレンヌで身元がバレて捕らえられ、パリに連れ戻されてしまう。

 それでもフェルゼンは諦めず、再びパリへ戻り、幽閉されているアントワネットの元に駆けつる。そして、指輪を贈り、2人は初めて一夜を共にするのであった。

 その後、もう一度国王に逃亡計画を持ちかけるフェルゼンだったが、国王とアントワネットはこれを拒否。2人に促される形でフェルゼンは自国へ戻り、これが19年間愛し合った2人の永遠の別れとなる。

 愛する女性の処刑が決定し、何もできない自分に絶望しながら別れるフェルゼン。一方のアントワネットも「だれよりもあなたを愛します」の言葉とともにフェルゼンと別れる。

 あまりにも切ない結末ではあったが、最後に一夜を共にし、家紋が彫られた指輪をアントワネットに渡して「未来永劫わたくしの妻はあなたひとりです」と伝えられたことが、彼にとってのせめてもの救いだっただろう。

 

 物語序盤は、なかなか自分の熱い想いをアントワネットに伝えられなかったフェルゼン。しかし、生涯を彼女に捧げると決めてからは「ともに死ぬためにもどってまいりました…」「あなたの忠実な騎士にどうぞお手を…」など、まさに情熱的な愛の言葉を口にするようになる。

 フェルゼンとアントワネットの恋は『ベルサイユのばら』で脚色されてはいるものの、史実に基づいているというから興味深い。2人の愛はきっと時代を超え、今なお多くの人の心に刻まれているだろう。

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