「未来永劫わたくしの妻はあなたひとりです」『ベルサイユのばら』アントワネットとの禁断の愛を全うした「フェルゼンの恋愛観」を振り返るの画像
フェアベルコミックス『ベルサイユのばら』第7巻(フェアベル)

 池田理代子氏の『ベルサイユのばら』は、誕生から50年以上が経過しても色褪せることのない不朽の名作だ。その魅力は多岐にわたるが、中でも印象深いのが登場人物たちが織りなすドラマチックな恋愛展開だろう。

 『ベルばら』の登場人物の多くは情熱的な愛のセリフを囁くが、主役の1人であるハンス・アクセル・フォン・フェルゼンは、物語の序盤では少し様子が違っていた。フランス王妃であるマリー・アントワネットと恋に落ちるも、王妃と伯爵という身分の違いもあり、アントワネットへのアプローチはかなり及び腰だったのである。

 ここでは、フェルゼンのアントワネットへのアプローチやセリフがどのように変化していったのかを振り返り、彼の恋愛観を振り返ってみたいと思う。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■アントワネットを忘れるために結婚!? スキャンダルから逃げる様子も

 フェルゼンはスウェーデンの伯爵であり、オペラ座の仮装舞踏会でアントワネットと運命的な出会いを果たす。仮面を取った美しいアントワネットの素顔にフェルゼンは一目惚れをするが、彼女がフランスの王太子妃殿下だと知るとうろたえる。

 その後、互いに惹かれあう2人だったが、周囲の目を心配したオスカルの忠告もあり、フェルゼンは祖国スウェーデンへと帰ってしまう。再びアントワネットと会うまではには、4年もの歳月が流れるのであった。

 当時のフェルゼンにとって、アントワネットは手の届かない憧れの存在であった。しかし、4年ぶりに再会した彼女はさらに美しくなっており、2人はより一層惹かれ合うようになる。

 その結果、宮廷ではよからぬ噂も立つようになり、フェルゼンはアントワネットを守るために父親の決めた相手と結婚しようとしたり、距離を置くためにアメリカ独立戦争へ志願したりするのである。

 アメリカへ渡ることを決意した際のフェルゼンは、オスカルに対し「すまないがわたしは逃げる… 逃げるぞ!」と告白しており、王妃との恋愛に向き合う自信や覚悟がないことが分かる。

 昔も今も、誰もが立場が違いすぎる相手との恋愛には臆病になってしまうものだろう。その相手がフランスを代表する王妃で既婚者。もし、関係が明るみになったら大変な事態になる。どれほどアントワネットに対する熱い気持ちがあっても、フェルゼンがためらってしまうのも共感できる。 

■告白はアントワネットから! 戦争を経て覚悟を決めたフェルゼン

 このように、アントワネットに対して、なかなか本心を伝えられずにいたフェルゼン。ただ、2人は4年後に再会してまもなく、アントワネットからの情熱的な告白により通じ合うこととなる。

 フェルゼンが父親の決めた相手と結婚すると知ったアントワネットは「あなたがよその女の方を妻にするなんて…」と絶望し、そして、「こんなにまであつく燃えあがってしまったこの胸をどうやってしずめろというの…!?」「わたしのフェルゼン!!」と叫び、彼の胸に飛び込む。そこでようやくフェルゼンも「おしたいしておりました……はじめてお姿を見た18歳のときから…」と本音を明かし、2人は熱い口づけを交わすのである。

 しかしこの出来事がきっかけで2人の噂は決定的になってしまい、フェルゼンはスキャンダルからアントワネットを守るため、アメリカ独立戦争へと旅立ってしまう。もう二度と会えないかに思われたが、その後、フェルゼンは無事に戦争から戻ってきて“もう二度とアントワネットさまのおそばをはなれません!”と宣言。生涯をかけて彼女を守ると誓っている。

 ここまで来るのに長い年月がかかった2人。フェルゼンがアントワネットのために生涯を捧げることを決めたのは、きっとアメリカ独立戦争で死線を彷徨うような体験をし、自分が何のために生きるべきか見つめる時間があったからだろう。

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