■大富豪の令嬢から一文無しの下働きに…『小公女セーラ』

 最後に紹介する『小公女(プリンセス)セーラ』は、フランシス・ホジソン・バーネットの『小公女』が原作。1985年から全46話が放送された。ロンドンのミンチン女子学院に転入した富豪の娘セーラは、父親の急死と破産によって無一文になり、メイドとして過酷な生活を強いられることになる物語。

 特別寄宿生として高待遇されていたセーラだったが、第11話で誕生日パーティ中に父の病死と破産の知らせが届く。すると最愛の父の死を悲しむ間もなく、次々とセーラにつらい現実が直面する。

 ミンチン院長は無一文となったセーラを学園から追放しようとするが、世間の評判を気にして、メイドとして働かせ、劣悪な屋根裏部屋へと追いやる。お嬢さま育ちのセーラにとって過酷な仕事だったが、メイドのベッキーに支えられながら誠実に働いた。

 しかし、アメリカの石油王の娘であるラビニアは、一時代表生徒の座を奪われた恨みからセーラを執拗にいじめる。

 特に第34話「嵐の中のつぐない」でのラビニアによる嫌がらせ行為は卑劣極まりなかった。嵐の中、石炭運びをしていたセーラが居眠りをしたとき、ラビニアは石炭の入ったバケツごと蹴り倒して笑うのである。

 そのうえ自分のドレスの染み抜きのため、暴風雨の中、セーラに洋服店まで行かせたあげく、自分をねたんだセーラが故意に汚したとミンチンにウソをつく。

 怒ったミンチンにさらなら重労働を課せられたセーラは、ついに体調を崩して倒れてしまう。それでもミンチンは「迷惑」「ただのカゼ」と言い張り、妹アメリアから「他の生徒に病気がうつったら学園の評判が……」の言葉で、しぶしぶヤブ医者を呼ぶケチ具合だった。

 だが、そのミンチン以上に恐ろしいのがラビニアの態度だ。自分のせいでセーラが倒れたというのに、彼女は「セーラの具合がかなり悪いのよ」と他人事のように友人に語ったのである。ラビニアの卑劣な言動や、あまりの加害者意識のなさに恐怖を覚えた。


 このほかにも『世界名作劇場』では、卑劣極まりない行為によって主人公が悲惨な目に遭う展開は珍しくない。だが、健気な彼女たちが逆境に挫けることなく立ち向かい、最後は幸せをつかむことによって、私たち視聴者に勇気や希望を与えてくれたのは間違いない。

 皆さんの心に残る『世界名作劇場』の健気なヒロインといえば、誰を思い出すだろうか。

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