■捨て子、生活苦からの身売り……数奇な運命に翻弄された『家なき子レミ』

 1996年から97年にかけて放送された『家なき子レミ』は、『ペリーヌ物語』と同じエクトル・マロが手がけた『家なき子』が原作。貧しくも家族と幸せに暮らしていた少女レミ・バルブランが、人買いから救ってくれた旅芸人ヴィタリスと旅をする物語。

 『世界名作劇場』ではアニメ化に際して原作から設定が変わることもあり、本作では主人公が8歳の少年から10歳の少女に変更された。

 そんなレミの最初の悲劇は第2話で語られる。養父はパリの道端で捨てられていた赤ん坊のレミを見つけ、高級な産着を見て金持ちの子と思い、謝礼金目当てに引き取ったのである。だが仕事中の事故で体が不自由になった養父は、卑劣にも金のために拾い子のレミを人買いに売ろうとする。

 そのレミを助け、境遇を憐れんで旅芸人一座に迎え入れたのが団長のヴィタリスだ。10歳の少女レミは家を恋しがるが、自分のせいで母や妹を不幸にしたくないと、泣きながらヴィタリスを追う健気な姿に涙が出る。

 レミは、ヴィタリスから文字や芸を学びながら旅を続けるが、卑劣な放火犯に馬車を燃やされたのをきっかけに、一座の仲間である動物たちを次々と失うことに。一座を立て直すためパリに向かおうとするが、胸を患っているヴィタリスは時々苦しむようになる。

 そんな折り、一座のスターである白い小猿のジョリクールが馬車にひかれて重傷を負い、医者に診せるために雪山越えを決行するが、途中で狼に襲われて犬のドルチェとゼルビーノを失ってしまう。

 そして第13話「雪の日の別れ」では、レミにとって最大の悲劇が襲う。ジョリクールを病院に届けたレミは、吹雪のなかで動けなくなったヴィタリスと近くの納屋で休むが、その持ち主によって無情にも追い出され、吹雪の夜道をパリへ向かうことに。

 だが、パリを目前にして病に冒されたヴィタリスの体は限界を迎えて力尽き、レミに前へ進むよう言い残して亡くなってしまうのだ。一座の仲間や、厳しくも優しい師匠まで失い、レミは号泣する。

 全26話(テレビ未放送の3話を含む)の序盤だけで、レミにはこれだけ多くの悲劇が襲った。さらにパリについてからも、身寄りのない子を買い取って犯罪行為をさせていた極悪人のガスパールに苦しめられるが、ヴィタリスの言葉を胸にレミは前へと進み続けるのだ。

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