
子どもの頃、日曜日の夜7時半から始まるアニメシリーズ『世界名作劇場』を楽しみにしていた人も多いだろう。どんな冒険が待っているのか、あのキャラの運命はどうなるのか、主人公は大切な人に会えるのかと、胸をドキドキさせながら毎週見ていた記憶がある。
特に自分と同い年くらいの主人公が理不尽な扱いを受け、残酷な運命に打ちのめされる姿は幼心につらかった。
たとえば『フランダースの犬』では、画家を目指す心優しき少年ネロが貧困の末に悲劇に見舞われ、『母をたずねて三千里』のマルコは母親を探すためにイタリアからアルゼンチンへの過酷な旅に出て、『ロミオの青い空』では貧しい家を助けるためにロミオは自ら身売りし、煙突掃除夫として劣悪な環境で過ごすことになる。
そんな、さまざまな悲劇が描かれた本シリーズには、『赤毛のアン』や『私のあしながおじさん』に代表されるように少女が主人公の物語も多い。
そこで今回は『世界名作劇場』のヒロインたちが受けた、あまりにも卑劣な仕打ちや、悲惨すぎる展開の数々を振り返ってみたい。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。
■少女から全財産を巻き上げた卑劣な大人に怒り…『ペリーヌ物語』
1978年に放送された『ペリーヌ物語』は、フランスの作家エクトル・マロの『家なき娘』が原作。旅の途中に親を亡くした少女ペリーヌ・パンダボアヌが、フランスのマロクールで織物工場を経営する祖父のところで奮闘する物語だ。
ペリーヌの父エドモンはビルフランの息子だが、インド生まれの妻マリとの結婚を反対されて家を出る。しかし、仕事を失ったエドモンは家族を連れ、故郷フランスに向かうが、第1話の冒頭で亡くなり、ペリーヌは病弱な母と旅を続けることになった。
全53話の半分はペリーヌたちの苦難の旅が描かれ、第21話では最愛の母さえ亡くしてしまう。それでも一人で旅を続けるペリーヌに、心ない大人の卑劣な仕打ちが襲う。
母親の葬儀後、わずかなお金しか持たないペリーヌは食パンを買おうとするが、パン屋の女主人・マルガレータから突然「ドロボウ」とののしられ、全財産の5フラン銀貨を「これはニセ金だから」と奪われてしまう。
無実の罪を着せられ、大切なお金まで失って困惑するペリーヌだが、周囲の白い目に耐え切れず、泣きながら逃げ出すことになる。
このニセ金騒動はもちろんマルガレータのウソであり、13歳の少女から奪った銀貨を自分のものにしていた。事情を知ったスイカ農家の兄弟により銀貨を取り返すも、最後まで悪態をついていたマルガレータには怒りがこみ上げた。
フランスにたどり着いたペリーヌは、素性を隠して祖父の工場で従業員として働くことになる。祖父のビルフランは、息子が家を出たのは妻がたぶらかしたせいだと恨み、子どもの存在は気にもかけていなかったのである。
その後、語学力を買われたペリーヌは、社長であるビルフランの秘書に抜擢される。徐々に祖父からの信頼を得ていくが、その過程で次期社長の座を狙うテオドールと工場長タルエルの陰謀に巻き込まれてしまう。
テオドールの母親(祖父の姉)から、ペリーヌの質素な服が会食時にふさわしくないと、大勢の前で恥をかかされるシーンは、同じ女の子として見ているのがつらかった。
さらに、タルエルと密談をしていたテオドールに、ペリーヌの愛犬であるバロンが撃たれたりと、次から次へと彼女を悲劇が襲う。
だが、見ていてもっとも胸が痛かったのは、ペリーヌの正体を知らない祖父のビルフランが、怒りのまま彼女の母親を侮辱する場面だ。のちにビルフランは悔い改めるのだが、祖父の言葉に傷つき、ひとり耐えながら泣くペリーヌが気の毒でならなかった。