“魔界の王子”に“主人公が死ぬ”、“実の兄妹疑惑”も…黄金期『りぼん』名作で読者をハラハラさせた「意表を突く展開」の画像
『ママレード・ボーイ』アニバーサリーDVD-BOX(東映アニメーション)©吉住渉/集英社・東映アニメーション©吉住渉/東映・集英社・東映アニメーション1995

 集英社の少女漫画雑誌『りぼん』は、昭和の時代から現在にいたるまで、少女漫画界を牽引してきた雑誌だ。きらきらと輝く男女の恋愛模様を描いたストーリーに、胸をときめかせた読者も多いだろう。

 しかし、『りぼん』が長きにわたり人気を博してきた理由は、単に恋愛漫画だけが理由ではない。物語が進むにつれて読者の予想を裏切るような、意外な展開を迎えるストーリーが多かったことも、その魅力の理由である。

 たとえば、学園の人気者で普通のイケメンだと思っていたキャラが実は魔界の王子であったり、ほのぼのとしたストーリーだったのに、突如主人公の死が訪れるなど、予期せぬ急展開が描かれることも少なくなかった。

 そこでここでは、『りぼん』黄金期と呼ばれた90年代の人気作品の中から、読者の度肝を抜いた衝撃的なストーリーを紹介していく。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■普通のイケメンだと思っていたら実は魔界の王子だった!『ときめきトゥナイト』真壁俊

 池野恋氏の『ときめきトゥナイト』は、80年代から90年代にかけて絶大な人気を誇った作品だ。

 主人公は、吸血鬼の父と狼女の母を持つ魔界人の少女・江藤蘭世。彼女は同級生の真壁俊に片想いをしている。

 物語の序盤は、蘭世の恋愛模様を中心としたドタバタなラブコメディとして展開するが、物語が進むにつれてファンタジーストーリーへと変化していく。

 その最大の急展開が、蘭世が想いを寄せる俊の正体である。当初は普通の男子中学生として描かれていた俊。魔界の王子としてはすでにアロン=ルーク=ウォーレンサーという少年が登場していたのだが、実は王子は双子であり、人間界にもう一人いるとされた王子こそが俊だったのである。

 さらに、俊は王妃とともに魔界を追放された過去を持ち、前世では蘭世と恋人であった事実も明らかになるのだ。

 今でこそ異世界ものや前世を絡めたラブストーリーはたくさんあるが、昭和の少女漫画でこうした作品は珍しく、そういった意味でも『ときめきトゥナイト』は画期的な作品であったといえるだろう。

 俊が魔界の王子となって以降、物語は2000年前に起きた争いを軸とした冥王ゾーンとの戦いへ発展するなど、壮大なストーリーとなっていく。

 ラブコメディ作品かと思いきや、これまでにない異世界ファンタジーへと変貌した、まさに先の読めない急展開で読者を魅了した作品であった。

■主人公死亡の展開に絶句…『姫ちゃんのリボン』

 水沢めぐみ氏の『姫ちゃんのリボン』は、1990年から93年にかけて連載され、アニメ化もされた人気作品だ。

 主人公・野々原姫子は、魔法の国の王女・エリカから、1時間だけ他人に変身できる「魔法のリボン」を授かる。不思議なリボンの力で、恋や友情に奮闘しながら成長していく姫子の物語だ。

 本作は、ファンタジー要素と日常のドタバタが交差する明るくコミカルな作品であった。女の子が変身して活躍することもあり、イメージでいうとキュートな魔法少女作品といえるだろう。しかしそのような明るい物語の中で、姫子はまさかの死を迎えるのだ。

 ある時、同級生の日比野ひかるに変身した姫子は、制限時間を超えて元の姿に戻れなくなってしまう。姫子はひかるの姿のまま仲間と旅行に出かけるのだが、そこで激しい豪雨による落石が発生。姫子は、巻き込まれそうになったエリカを庇い、自ら岩の下敷きとなり息を引き取ってしまうのだ。

 『りぼん』連載時の誌面では、姫子の相棒キャラのライオンのぬいぐるみ・ポコ太が「息…してない」とつぶやき、エリカの「姫子ーーっ!!」という慟哭で終わっている。このあまりにも急な展開に絶句した読者は多かっただろう。

 幸い、姫子はその後、ひかるの姿から徐々に元の姿に戻り、息を吹き返す。仲間との旅行というほのぼのした展開から一転、主人公の死という衝撃的な展開は『姫ちゃんのリボン』の中でも読者に驚きを与えたシーンであった。

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