
『ガンダム』シリーズといえば魅力的なモビルスーツ(MS)同士の戦闘シーンが見どころのひとつ。特に主人公機のガンダムや、そのライバル機との激突は、作品を代表する象徴的な戦いとして印象に残るものが多い。
しかし、『ガンダム』シリーズにおいて忘れてはいけないのは、そんなMSを収容する戦艦の存在だ。MSにとっての母艦であり、帰るべき家のような場所でもある。そんな戦艦が役目を終えて沈むシーンを見て、悲しさを覚えた人も多いのではないだろうか。
そして作品を重ねるごとにMSの性能だけでなく、戦艦の性能も上がっていった。今回は歴代の『ガンダム』シリーズのなかで、さまざまな観点から個人的に「最強」だと感じた歴戦の艦たちを振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■インパクト最強! 「バイク戦艦」衝撃のビジュアル
テレビアニメ『機動戦士Vガンダム』に登場する「アドラステア」は、宇宙と地球に新たな秩序による支配を目論むザンスカール帝国の、地球侵攻作戦「地球クリーン作戦」のために開発された宇宙・地上兼用の戦艦だ。
その最大の特徴は巨大な4つのタイヤを有していることで、地上を走行する際はタイヤを合わせて、まるでバイクのような2輪形態になる。そのため“バイク戦艦”の異名で呼ばれており、進路上に存在するあらゆるものを踏み潰しながら豪快に進むのである。
このアドラステアは「モトラッド(オートバイ)艦隊」の旗艦を務め「地球クリーン作戦」の中核を担ったほか、艦の至るところに火砲が設置され、絶大な火力を誇る。
劇中では主人公のウッソ・エヴィンたちの奮闘むなしく、アドラステア率いる艦隊は地球へ侵攻。街や人々を容赦なく車輪で踏み潰していく様子が描かれた。
奇抜な見た目とやったことのインパクトという意味では、『ガンダム』シリーズの最強戦艦の一角に挙げられるだろう。
ちなみにアドラステアは、戦艦としての万能性も優れ、宇宙から水中まで、あらゆる環境下で稼働できる。そのうえ単独での大気圏突入能力を持ち、堅固なビームシールドまで備えた、まさしく動く要塞であった。
■宇宙世紀「最速の艦」といえば
長谷川裕一氏によるコミック『機動戦士クロスボーン・ガンダム』(KADOKAWA)に登場する宇宙戦艦「マザー・バンガード」。木星帝国の攻撃で撃沈されたと思われていたが、それは帝国の目を欺くための偽装であり、ベラ・ロナが率いる新生「クロスボーン・バンガード」の母艦となった艦である。
そしてこの艦のマスト部には、宇宙世紀における最速の反動推進機関「ミノフスキー・ドライブ」が試験的に搭載された。艦のカテゴリーや時代が異なるので単純比較はできないが、シャリア・ブルやパプテマス・シロッコが向かった頃の「木星船団」は地球圏から木星まで片道2年という道のりだった。それに対し、続編の『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』ではマザー・バンガードのミノフスキー・ドライブを使用して木星まで1週間で到達している。まさに異次元の速度を誇る。
なおマザー・バンガードはミノフスキー・ドライブを搭載するため、全長900mに及ぶ巨大艦となっている。前身技術となるミノフスキー・クラフトを搭載した『機動戦士ガンダム』に登場するホワイトベースの全長262mと比べると、どれほど巨大かが分かるだろう。
ちなみにPlayStation2用のゲーム『第二次スーパーロボット大戦α』(バンプレスト)にもマザー・バンガードは登場し、その圧倒的な強さから「戦艦ではなくベラ・ロナ専用のモビルアーマー」と呼ぶファンがいたほどである。