■「認めているのか、いないのか…」相反する発言の真意

 かつてウォーターセブンからエニエス・ロビー編にかけて、ルフィの宿敵として立ちはだかったのが当時CP9のロブ・ルッチである。肉体を極限まで鍛え上げたルッチの存在感は圧倒的で、強烈な印象を残したが、ルフィに敗れている。

 そのルッチは、現在は世界政府の諜報機関CP-0に所属し、エッグヘッド編にて再びルフィと対峙することとなる。以前とは立場が大きく変わり、ルフィは「四皇」の座に就いており、ルッチはその動きを監視して抑え込む側の立場にある。

 本来であれば、政府上層部の許可がなければ四皇との接触は認められないはずだが、ルッチは過去の因縁を理由に独断で戦闘を開始。「麦わらを四皇とは認めていない」 という発言も飛び出した。

 しかし、のちに大将の黄猿が到着すると、今度はゾロとルッチが激突する展開を迎える。その際に彼の口から飛び出したのが、「四皇のNo.2……殺しがいがある」 というセリフである。

 つい先ほどまでルフィのことは「四皇として認めない」と発言しながら、今度はゾロを「四皇のNo.2」と認めたのである。

 この一見矛盾しているようなルッチの発言に読者から疑問の声もあがったが、かつて敗れた因縁の相手ということもあって、ルフィが絡んだときのルッチは冷静さを欠く様子が見て取れる。

 それにギア5に覚醒したルフィとの直接対決を経て、その圧倒的な力を身をもって体験。さらには海軍大将の黄猿を一人で食い止めるゾロの実力を目の当たりにしたことで、ルッチの認識自体が変わった可能性も考えられる。

 結果として、彼の発言の変化は矛盾というよりも「現実を受け入れざるを得なかった」と解釈するほうが自然なのかもしれない。
 

 『ワンピース』の長い物語のなかでは、いくつかのミスや矛盾を読者から指摘される場面もあった。しかし、そんなツッコミにも尾田先生は面白おかしく反論し、時には強引なこじつけを公式設定に昇華してくれるのも作品の魅力といえるだろう。

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