意外に多い?ドラマ『相棒』“本物のお化け”が絡んだ名エピソード 「右京さん気付いて!」の画像
相棒 season23 DVD-BOX I ©2024テレビ朝日・東映

 刑事ドラマの金字塔として知られる『相棒』は、推理の天才・杉下右京とその相棒たちの活躍が魅力の作品だ。いつも冷静沈着な右京には意外な一面があり、それは「幽霊が見たい」と常々思っているということだ。東京大学卒のキャリアで論理性を重んじる彼だが、幽霊が出たと聞けば興味津々で事件に向かう。

 非現実的な状況を前に右京が子どものようにワクワクするのは、ファンにとってはある種おなじみの展開だ。そんな『相棒』シリーズには、“本当のお化け”が登場したホラー回も存在する。今回はその中から3つのエピソードを振り返っていこう。

※本記事には作品の内容を含みます 

■せっかくお化けと遭遇できたのに…

 三代目相棒・甲斐亨(カイト)時代のエピソードであるシーズン11第18話「BIRTHDAY」。物語は右京が「家出少女」と名乗る少女に出会うところから始まる。

 その後、右京はカイトと合流し、彼女をマンションまで送っていく。その時、夜間にもかかわらずドアが開けっぱなしの民家に気が付き、調べてみると住人の老女・江美子が失踪していると判明。

 また、時を同じくして、隼人という少年が12歳の誕生日に行方不明になる事件も起きていた。その後も、強盗殺人容疑者の逃走とひき逃げ殺人事件が次々と発覚。やがて、それらの事件がすべてつながっていく。

 実は、江美子と隼人は強盗殺人の容疑者・大場によって誘拐されていた。しかもその大場が、逃走中にひき逃げ事故で死亡したため、2人の消息は途絶えてしまっていた。そんな中、特命係だけが真相にたどり着き、山奥のバンガローで心肺停止状態の隼人を発見する。

 その後、驚きの事実が明かされる。隼人は大人になるまで生きられるかわからない遺伝性の疾患を抱えていたのだ。12歳までに発症しなければ大丈夫だろうと医師に言われていたことから、12歳の誕生日は彼や彼の両親にとって大きな節目であった。

 というのも、隼人の姉も同じ疾患によって死亡しており、両親は隼人を失うことを何よりも恐れていた。母親は姉の写真に「お願い。隼人を守ってあげて」と祈るのだが、その時映し出された“姉”の写真が衝撃的だった。

 写真の少女こそ、物語冒頭で特命係が出会った家出少女だった。彼女は弟が命の危険にさらされている状況を何とかするため、幽霊となって特命係を江美子の家まで連れてきた。そして、弟を見事に発見させる奇跡を起こしてみせたのだった。 

 常々幽霊に会いたいと願っている右京の前に、ついに本物の幽霊が現れた。それにも関わらず、彼が最初から最後まで気付かなかったことには思わずため息が出てしまう。

■記憶喪失のカイトの前に現れたのは…

 シーズン11第9話「森の中」と第10話「猛き祈り」は、カイトが何者かに襲撃されて瀕死になってしまう場面から始まる衝撃のエピソードだ。独特の不気味さがあり、記憶喪失のカイトの足跡をたどっていく謎めいた展開に引き込まれる。

 カイトが残した「鈴の音」という言葉を鍵に、捜査を進める右京たち。彼らは森の奥にある「まろく庵」にたどり着くが、そこではとんでもないことがひそかに行われていた。庵主である老人・伏木田が世間を憂い、「祈祷」に挑んでいたのだ。

 その内容は、生きたまま地中で祈り続けそのまま絶命し、「即身仏」になるというもの。カイトは伏木田が鳴らしていた鈴の音でそれを知り、自死に等しいその行為を阻止しようとした。しかし、まろく庵の人間にとって伏木田の行為は神聖なもので、邪魔されるわけにはいかないと凶行に及んだのだった。 

 事件が解決するのと時を同じくするように、記憶を失ったカイトは病室で鈴の音を聞く。すると目の前には和装の老人が立っており、「申し訳ありませんでしたね」と話す。次にカイトが目を覚ますと、失われていた記憶がすっかり戻っていた。 

 驚きなのは、その老人こそが即身仏となった伏木田だったということだ。カイトは彼に実際会ったわけではなく、顔を知っているはずもない。しかし、病室に来たのは伏木田に違いないと断言する。

 他の面々はにわかには信じられないというが、右京は「夢というのは理屈に合いません」と嬉々として語り、「そうですかぁ、君は幽霊を見ましたかぁ」とうらやましそうにカイトを見ていた。

 その後、特命係は即身仏となった伏木田を森の中へ探しに行くも、その場所だけがカイトの記憶からすっぽりと抜け落ちていた。これにもまた伏木田の意志が働いているのか……。森に響く鈴の音とともに、不思議な後味の残るエピソードだった。

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