1980年代といえば、テレビ、アニメ、ゲーム、おもちゃなど、数々のブームが巻き起こったアツい時代。そんな熱狂の真っ只中を生きたのが、昭和47年(1972年)生まれの芸人・土田晃之。“華の47年組”の一人として、著書『僕たちが愛した昭和カルチャー回顧録』を上梓した彼が、子どもの頃に堪能した「昭和カルチャー」を独自の視点で語り尽くします!
■友人に勧められた『天空の城ラピュタ』
僕が 『ガラスの仮面』 にハマってた中2の頃、いつもつるんでたメンバーの中にKくんがいました。
「『ガラスの仮面』ってめちゃめちゃ面白いよ」
僕がそう言っても、Kくんは 「少女漫画なんて読まねーよ!」 とまったく関心を示しませんでした。そのくせ 『めぞん一刻』 には無茶苦茶ハマっていて、あまりにも管理人さんの響子さんにどハマりしたKくんは、自分の部屋のドアに 「管理人室」 と貼るほどの入れ込みようでした。
そんなKくんがある日、僕らに自信満々に薦めてきたのが 『天空の城ラピュタ』 。映画が公開されてすぐ観てきたKくんは、興奮が収まらない様子で僕らに自慢げに言うんです。
「『ラピュタ』 面白いよ!」
『ナウシカ』 しか見てない僕らは 『ラピュタ』 の面白さはわかりません。
「いやいや、 『ナウシカ』 に勝つわけないだろ! ナウシカ最強だよ」
それでも引かないKくんは、 「いやいや、 『ラピュタ』 めちゃめちゃすごいから! ナウシカなんてもんじゃないから。絶対観たほうがいいって!」 と、強烈にプレゼンしてきます。でも、こっちは観る気ないから、
「観ねーよ、そんなの! もうアニメなんて観ねーよ」
あっさりKくんを一蹴。結局、そのときは観に行きませんでした。
■「竜の巣ある!」ラピュタにハマるも、友人とのすれ違いが…
ある日、そんなKくんと 「大宮に行こう」ってなって、チャリで出かけたときのこと。大宮まで行く途中の坂道を下りたところにある “見沼田んぼ”っていう、すごく見晴らしがいい広い場所に出たとき、空にものすごくバカでかい雲が出てたんです。
そこで突然、Kくんがチャリを止めたと思ったら、 「竜の巣だ!」って言い出した。
「何ワケのわかんないこと言ってんの?」
それでもKくんは雲を指さして、
「ほら、あれ竜の巣!」
「何? “なんの巣” だって!?」
「 “竜の巣” だよ!」
『ラピュタ』 に出てくる巨大な雲の塊 (天空の城ラピュタを包み込んでいる雲) のことを言いました。でも『ラピュタ』 を観てない僕には、なんのことだかさっぱりわからない。
「なんだ、その “竜の巣”って」
それから1年半ぐらい経った頃、『ラピュタ』 がテレビで放送されました。Kくんには 「もうアニメなんて観ねーよ」 なんて言ってた僕ですが、もちろん観ました。観てばかハマリしました。
「ラピュタすごい! めちゃめちゃ面白い!」
すっかりハマった僕がある日、でかい雲を見つけて、
「Kくん見てアレ、竜の巣じゃない⁉」
と、すごいもの見つけた風にそう言ったら――。
「何言ってんの」
Kくんはとっくにブーム過ぎてました。
「この前と逆だな、立場が……」
あれだけ、どハマリしてたKくんのテンションは、もう完全に下がりまくってました。


