■『アメトーーク!』で再読、改めて気づいた『ガラスの仮面』の魅力

 それからだいぶ経って、あるときに『アメトーーク!』で“ガラスの仮面芸人”をやるってなって、 「つっちー、読んでた?」って聞かれてキャスティングされたけど、細かいエピソードは忘れちゃってたから、電子書籍で全巻買ってあらためて読み直してみたら、やっぱり面白かった。

 よくできた話なんですよ。マヤは平凡で地味だけど、実は演技の天才。姫川亜弓は大女優の娘で容姿もキレイで生まれながらの天才。この2人がライバル同士。物語の始めのほうで『ヘレンケラー』の舞台を2人がW主演で演じる場面があって、これが盛り上がる。

 いまだにそれに似たシチュエーションを見ると、「ガラスの仮面のヘレンケラーじゃねーかよ!」って言いたくなるぐらい印象的なシーン。

 三宅裕司さん率いる熱海五郎一座の舞台で、Take2の2人が昼の部と夜の部で同じ役のWキャストで出て、2人一緒には同じ舞台に立たないっていうのを聞いて、「ガラスの仮面じゃねーか!」って言った覚えがあります。「それ聞いて誰がわかるんだ」って話ですけどね。そもそもマヤと亜弓と、Take2の2人とじゃ、全然違うだろっていう。

■連載開始から50年、なお続く“未完の大作”を待ち続ける

 『ガラスの仮面』の何がすごいかって、連載開始は僕が4歳ぐらいのときなのに、まだ話が終わらずに続いてること。途中で休載があったりしながら、ひとつの話が続いてます。

 それだけ長い間続いてると、時代の変化に合わせて漫画に出てくる小道具も変化します。たとえば最初の頃は黒電話使ってたのが、携帯電話に変わってスマホになって。ドラマの中の時間軸は数年しか経ってないのに、黒電話からスマホに変わった。テレビもブラウン管から薄型液晶に変わってるし。

 その変化が、ガラスの仮面の世界では2年ぐらいの間に起こるんです。『サザエさん』だと、いつまでも黒電話使ってたり、カツオとワカメがいつまで経っても小学生だったりするけど、『ガラスの仮面』はそうはならない。時代に合わせて変化してます。ドラマの時間軸を飛び越えた進化が面白い。

 あとすごいのが、とにかくセリフの文字数がものすごく多い。ドラマの中でお芝居(劇中劇)が始まっちゃうと、登場人物が“役のセリフ”を言いながら、かつ“自分の心の中の声”もしゃべるから、1コマに描いてあるセリフの文字数がハンパなく多い。

 そもそも僕は字を読むのが好きじゃないから、『ガラスの仮面』1話読むのは、普通の漫画の倍以上かかったりする。だからコミックス1冊読み終わるともうグッタリします。それでも次から次へと読みたくなるぐらい面白いっていうのがすごい。

 いま出てるのはコミックスの49巻まで。僕も電子書籍で49巻まで持ってます。次の50巻目はいつ出るのか、話が完結するのはいつなのか……。連載開始から50年、楽しみに待ってます。

 

【プロフィール】
土田晃之(つちだ てるゆき)
1972年9月1日生まれ、東京都練馬区出身・埼玉県育ちのお笑いタレント、司会者、コメンテーター。太田プロダクション所属。1991年にお笑いコンビ「U-turn」としてデビューし、解散後はピン芸人としてバラエティ番組や情報番組で幅広く活躍。ガンダムやサッカー、家電など多彩な知識を持ち、親しみやすいトークで人気を集めている。『僕たちが愛した昭和カルチャー回顧録』が、2025年8月20日より双葉社から発売。

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