『BLEACH』や『からくりサーカス』にも…「凶悪な存在だったはずなのに」少年漫画で主人公サイドのために命を落とした“元敵キャラ”の画像
テレビアニメ『からくりサーカス』キービジュアルより (C)藤田和日郎・小学館/ツインエンジン

 バトル漫画では、当初は敵として登場したキャラが後に仲間になる展開が描かれることもある。ワケあってあえて敵側に回っていた、主人公の思想に共感して心を入れ替えたなど、その理由はさまざまだ。

 そんな元敵キャラたちは確固たる信念の持ち主であり、自分の意思を貫く姿が美学を感じさせる。最初は凶悪な存在として描かれていたからこそ、そのギャップに心打たれてしまうのだ。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

■幼なじみのため全てを捧げた『BLEACH』市丸ギン

 まず紹介したいのが、久保帯人氏による『BLEACH』(集英社)に登場する市丸ギンだ。護廷十三隊三番隊隊長として主人公・黒崎一護の前に現れた彼は、悪役として強い印象を残した。

 一護たちを中に入れた門番を虫けらのように扱い、朽木ルキアにあえて生きる希望を持たせてから絶望させる。終始人を食ったような態度で、何を考えているのか分からなかった。

 そして、護廷十三隊五番隊隊長の藍染惣右介が裏切りを告白すると、協力者としてともに離反する……。そこからもギンは倒さなければならない敵だと強く印象付けられた。

 しかし、藍染の崩玉による覚醒という状況ですべてが一変する。ギンはなんと藍染に向かっていきなり刃を突き立てたのだ。

 藍染の斬魄刀「鏡花水月」には催眠効果があり、それを無効化しなければ誰も彼を倒せない。だからギンは藍染に味方のふりをして近づき、時間をかけて無効化の方法を聞き出していた。

 催眠から逃れるためには、能力の発動前に刃に触れる必要がある……。そこでギンは藍染が見せたほんの一瞬の隙に刃に触れ、そのまま胸を貫く。しかもギンの斬魄刀には毒が仕込まれていて、それを藍染にずっと隠していた。

 ギンがそこまでして藍染を狙っていた理由は、幼なじみである松本乱菊のためである。乱菊が幸せに生きられる世界を守るため、藍染を倒そうと決意したのだ。

 ギンの活躍によって、藍染は肉体が崩壊し始める……が、崩玉の力で再生して復活。ギンは反撃されて瀕死の重傷を負ってしまった。その後、ギンが乱菊を見つめながら死にゆく様は、あまりにも悲しすぎる。ギンの乱菊への一途な思いが伝わり、これまでの苦労が報われなかったのが残念でならなかった。

■悲願を果たした『からくりサーカス』アルレッキーノとパンタローネ

 次は藤田和日郎氏による『からくりサーカス』(小学館)のアルレッキーノとパンタローネだ。この2人は「最古の四人」と呼ばれる自動人形で、フランシーヌ人形を笑わせるためだけに作られた。

 彼らはフランシーヌ人形を笑わせるためだけに村人を大量虐殺するなど、心を持たないからこその残虐性を見せる。加藤鳴海たちの前に最悪の敵として立ちふさがり、仲間を次々と倒していく姿は恐ろしかった。

 しかし、そんな2人は忠節を尽くしてきたフランシーヌ人形が「影武者」だったと知り、生きる意味を失ってしまう。そんな時に現れたのがフランシーヌとうり二つのエレオノールだ。やがて彼らはエレオノールに忠誠を誓うと、人間と心を通わせて「最後の四人」との戦いを買って出た。

 最後の四人はあらゆる点で2人を上回る。そのため倒すことができず、逆に破壊されてしまう……。それでも彼らは倒すためのきっかけを作り、鳴海が意思を引き継ぐかのように弱点をついて倒した。

 最後はボロボロになった体を引きずり、物陰からエレオノールが笑っている顔を見て歓喜したまま活動停止。すべては「フランシーヌ様の笑顔」のために……それが実現して本当に幸せそうだった。

 あれほど凶悪だった2人が、自らを犠牲にしてまで人間のために戦った姿には感動してしまう。

  1. 1
  2. 2
  3. 3