■普通の人間のはずなのに…『ARMS』高槻巌
皆川亮二氏による『ARMS』(小学館)の高槻巌も影の実力者だ。巌は普通の人間であるにも関わらず、サイボーグ部隊や特異能力者、ARMSを平然と相手にする。
巌は自らを「通りすがりのサラリーマン」と謙遜して話すが、そんなレベルの強さではない。視認するのが難しいほど速く動く相手も、一撃で粉砕されてしまうような力も、全て軽々といなしてしまう……。
特に印象的だったのが、凶悪な敵であるジェームス・ホワンこと高槻崖が恐れおののくシーンだ。
崖は巌の弟で、過去の経験から歪んだ性格になってしまった。そして、逃亡や裏切りの末にキース・グリーンの持つ空間の断裂の能力を手に入れ、誰にも負けない自信を持つことになる。これなら巌にも勝てる……そう思って巌との対決が始まった。
空間の断裂は目に見えない斬撃が無数に飛んでくるので、かわすことはほぼ不可能。しかし、それを可能にしてしまうのが巌だ。
崖の放つ殺気を読んで全てをかいくぐり、ジャバウォックの爪による一撃で圧倒する。これに崖は恐怖して、巌の強さを再認識することになった。巌は“人間はARMSには負けない”と口にしていたが、この言葉を体現しているところがスゴい。
強キャラが恐れる強さを持つ最強キャラはあらゆる言動が自然体で、そこからまた得体の知れない強さがにじみ出ている。普段は怖い物なしの強キャラが彼らを前に怯んでしまう姿も新鮮で面白い。