■森重寛のその後——未消化の怪物
第187話「1年坊主」で、全国の舞台で突如姿を現したのが、名朋工業高校の怪物・森重寛だった。作中屈指の巨躯と圧倒的パワー、そして不遜な態度を併せ持つ彼は、読者に「この先が気になる」と強く印象づけたキャラのひとりである。
バスケを始めたのは中学2年の夏と遅かったが、わずか数年で愛知最強と謳われた愛和学院を破り、地区予選を制覇。その試合を観戦していた海南大附属の牧紳一も「高砂1人でどうにかなる相手じゃない…見にきといてよかったな…」と、初見でその脅威を悟っていた。
桜木が森重に挑発的に肩をぶつけた場面では逆に吹き飛ばされてしまうなど、その衝撃は彼の心にも大きかったようで、196話「合宿3」では夢の中にまで登場していた。多くの読者が、この2人の対決がクライマックスで描かれるのではないかと期待したことだろう。
しかし、その勝負が作中で実現することはなかった。森重は実際はどんな選手だったのだろうか。ちなみに、その圧倒的な力から森重を擁する「名朋工業のインターハイ優勝説」もファンの間で囁かれていたが、これについては作者の井上氏自身が否定している。
今回は「その後」が気になる意味深描写を振り返ってきたが、果たして、この続きを目にする日は訪れるのだろうか。
映画『THE FIRST SLAM DUNK』のトークイベントで、続編の可能性を聞かれた際、井上さんは以下のように答えている。
「そういうのってあると言っても、ないと言っても自分を縛るじゃないですか。あると言ったのに、なかったらダメだし。ないと言ったら、描きたくなった時に描けなくなる。だから今は言わないです」と。
つまり現状、続編は完全否定されているわけではない。ファンのひとりとして、その日が来ることを静かに待ちたい。