
2016年、惜しまれつつも最終回を迎えた『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(秋本治氏)が、再び帰ってくる。8月18日発売の『週刊少年ジャンプ』(集英社)38号に読み切り掲載が発表されたのだ。
さて『こち亀』の名物お巡りさん、両さんこと両津勘吉は「結婚しそうでしなかった男」としても有名だ。40年間の連載期間のなかでさまざまな女性と結婚寸前までいっても結局フラれてしまい、いまも独身を貫いている。はたして両さんが結婚するとしたら、相手はいったい誰になるのだろうか。
一部のファンの間で根強く囁かれているのが「秋本・カトリーヌ・麗子と結婚する」という説だ。『こち亀』レギュラー女性キャラのなかで最も両さんと付き合いが長く、男女というより兄妹のような関係に見える2人。だが、作中の描写を紐解くと、両さんも麗子も決して脈ナシとはいえず、むしろ互いを異性として意識している態度が見えてくるのだ。
かくいう筆者も両さんの本命は実は麗子で、麗子も本心では同じ気持ちだと睨んでいる。今回は、両さんと麗子の秘めたる恋心の一端を紹介していこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■両さんは変装した麗子にベタ惚れしたことも
まずは、両さんから麗子に向けられる気持ちを考えてみよう。さまざまな女性と浮名を流してきた両さんだが、意外にも麗子と恋仲になったことは一度もない。だが、両さんは麗子を絶世の美女として認識しており、ふとしたきっかけでそれを意識する話もある。
たとえば「炎の麗子争奪バトル!の巻」では、本物そっくりの「麗子ドール」を通して彼女がいかに美女かを再認識し、ドールの販売を取りやめた。あのお金にがめつい両さんが儲け話を自ら投げ捨てたのだから衝撃だ。疑り深い麗子に問い詰められて赤面する両さんは、さながら恋する漢(おとこ)だった。
また、両さんは麗子の見た目だけでなく内面も好みのようだ。185巻収録「レイコ変身の巻」では、特殊メイクで大柄な中年女性に変身した麗子に、両さんは正体を知らず親切に接する。
「妙に気が合って性格美人」とべた褒めし、麗子本人に“彼女とまた会いたい”とお願いするほどに気に入っていた。正体を知られていない麗子がやんわりと断りつつ、まんざらでもない顔をしているのが印象深い。
このように、両さんにとって麗子は外見も性格も「ドストライク」の女性なのだ。何かきっかけがあれば、金銭勘定を抜きにして彼女に惚れこむ可能性は大いにあるだろう。
■「いきそびれたら両ちゃんのところにでも」麗子が匂わす両さんへの想い
では、麗子のほうはどうだろうか。ガサツでお金に汚い両さんにガツンと言って喧嘩になることも多いが、異性として悪しからず思っている態度を何度も見せている。
『こち亀』ファンの間で有名なのが、「夏便り…の巻」でのワンシーンだろう。「年をとるともらい手がなくなるぞ」「わしたちのせいで婚期をのがしたら…悪いから その………」と、柄にもなく自分を心配する両さんに、麗子はほほえんでこう返す。「いきそびれたら 両ちゃんのところにでも いこうかしら」と。
両さんは「変なこというな」と怒るが、冗談でもこんなセリフを言えるのは、相当に気を許している相手の証だろう。このエピソードは第31巻と比較的初期のエピソードであり、この頃から麗子は両さんへの好意を匂わせていることがうかがえる。
両さんが擬宝珠纏(ぎぼし まとい)との間に子どもを作ったと騒ぎになった「MATOI♡アンド RYOsan」は、さらに衝撃的だ。
纏から妊娠の事実(実際は勘違い)を告げられた麗子は、一コマだけ憂いを帯びた表情を見せてから祝福している。
その後は「両ちゃんがパパになるなんて なんか複雑ね…」と呟き、両さんとの楽しかった思い出を振り返るのだが、その表情がなんとも絶妙で、いろいろな想像をしたくなるほど繊細なのだ。筆者の目には正直、大切な人が遠くに行ってしまった切なさが滲んでいるように見えて仕方なかった。
麗子は両さんと最も付き合いが長い女性だ。近すぎるからこそ好意を言葉にもできず、それでも態度からその想いが見え隠れするのではないだろうか。