『ガンダム』シリーズでは激レア? 「強化人間」という“最強の死亡フラグ”を回避した奇跡の人物たちの画像
DVD『機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン6』(バンダイナムコフィルムワークス) (C)創通・サンライズ・毎日放送

 長く続く『ガンダム』シリーズのなかで、とくに悲しい運命を背負った存在に「強化人間」たちがいる。彼らの大半は戦災孤児やクローン人間であり、その生い立ちから過酷な者が多い。

 内科的、外科的に身体強化を施された強化人間のなかには、過去の記憶を失っていたり、記憶を改ざんされたりと、非人道的な精神操作を受けた者もいた。

 そんな強化人間たちのほとんどは戦いのなかで短い生涯を終えており、これは宇宙世紀シリーズのみならず、すべての『ガンダム』シリーズに共通している。

 そのため「強化人間=死亡フラグ」と思っていた視聴者も多いのではないだろうか。

 しかし、強化人間の中にはそんな過酷な運命を乗り越え、戦いを生き延びると同時に幸せをつかみ取った者もいる。今回は「アナザーガンダム」と呼ばれる宇宙世紀以外のガンダム作品において、「死亡フラグ」を乗り越えた貴重な人物たちを振り返ってみたい。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■イノベイター化によって憎しみにとらわれながらも生還した少女

 テレビアニメ『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』に登場したヒロインのひとり「ルイス・ハレヴィ」。天真爛漫な美少女のルイスは、恋人である「沙慈・クロスロード」を振り回しつつ、幸せな高校生活を送っていた。

 しかし、ルイスも参列していた親類の結婚式をネーナ・トリニティがたまたま目撃。ストレスにより暴走したネーナは、式場に無差別攻撃を行う。この暴挙でルイスの親類・家族は皆殺しに。ルイスだけはなんとか一命をとりとめたものの、彼からもらった指輪をはめるはずだった大切な左手を喪失する。

 その後、沙慈とも離別したルイスは、幸せな日常を奪ったガンダムへの怨念を募らせ、地球連邦平和維持軍に加入。モビルスーツのパイロットとなる。機械の義手をつけ、その傷の細胞異常を抑えるための薬物に依存するようになってしまった。

 しかも、その薬剤には人間を新人類「イノベイター」に変える効果があり、彼女の負の感情を増幅。イノベイター化したことで、ますます彼女は復讐へと傾倒していく。

 そして、ついにルイスは両親のかたきであるネーナが乗る「ガンダムスローネドライ」を撃破。復讐は果たしたが、結局両親が戻ってこない虚しさに彼女の精神は崩壊する。

 最終的に錯乱したルイスは、恋人だった沙慈まで手にかけようとする。だが、真のイノベイターとして覚醒した主人公「刹那・F・セイエイ」と「ガンダム00」が放った「トランザムバースト」により、ルイスはかつての優しき心を取り戻し、沙慈とともに戦いのない世界へと帰還したのである。

 劇場版『機動戦士ガンダム00 A wakening of the Trailblazer』の中では、ルイスは薬物による後遺症に苦しみながらも沙慈のサポートを受け、少しずつ回復の兆しが見られた。

 薬物によるイノベイター化という、いわば強化人間的な状態から平穏な日常を取り戻した珍しい例といえるだろう。

■主人公たちの窮地を救った人工ニュータイプ

 テレビアニメ『機動新世紀ガンダムX』に登場した、15歳の少年「カリス・ノーティラス」。彼は人類のほとんどが消え、秩序の崩壊した世界で街の自衛団として戦っていた人物だ。

 カリスの出自は不明だが、市長である「ノモア・ロング」によって作り上げられた人工ニュータイプである。ニュータイプ専用モビルスーツ「ベルティゴ」を巧みに操る能力を持つが、その代償として月に1回程度の頻度で激しい苦痛に見舞われる体質となってしまった。

 その後、純粋な心をノモアに利用され、彼の復讐に利用されていたことを知ったカリスは、自らの死を望むようになる。しかし主人公のガロード・ランと、真のニュータイプであるティファ・アディールによって救われ、その生命が尽きるまで生き抜くことを決意するのだった。

 物語の後半、カリスは地球の秩序を武力によって築こうとする「新地球連邦軍」に抵抗するレジスタンスとして登場。ガロードの仲間が処刑されそうになったところを救出し、彼らとともに戦う。

 敵陣営の強化人間として登場しながら最後まで生き延び、主人公たちと共闘までしたカリスは、『ガンダム』シリーズの中でも非常に珍しいキャラクターといえるだろう。

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