■静かな怒り…姉・胡蝶カナエを奪われた過去
しのぶは、かつて炭治郎に「君には私の夢を託そうと思って」「鬼と仲良くする夢です」と語ったように、表向きは鬼との共生を望む姿を見せている。しかし一方で、多くの人間を殺めた鬼に対し「お嬢さんは正しく罰を受けて生まれ変わるのです」と冷徹に言い放ち、身の毛もよだつ拷問の数々を平然とやってのけようとする非常さも見せていた。
実はしのぶは、かつて実の姉・胡蝶カナエを鬼に殺された過去があった。カナエは鬼と仲良くしたいと願う優しい人格者であったが、そんな姉を鬼に奪われたことで、しのぶは心の奥底に鬼への怒りを密かに宿し続けているのである。
しのぶは姉の夢であった「鬼と仲良くする夢」を、姉のように優しい炭治郎に託そうとする。鬼への憎しみを抑えながら、それでも姉の遺志を継ぎたいと懸命に努力してきたしのぶを思うと、胸が熱くなってしまう。
アニメ「柱稽古編」では、継子のカナヲに姉・カナエを殺した鬼の正体と、その鬼の倒し方を話す重要なシーンが描かれていた。最終決戦となる「無限城編」で明らかになる、姉を奪った鬼の正体、そしてしのぶが練り上げた作戦の全貌が明らかになる瞬間を、ぜひ見届けてほしい。
■意外に仲がいい? 胡蝶しのぶと鬼殺隊メンバーの関係
作中、しのぶは炭治郎たちが冨岡義勇の次に出会う柱である。物腰が柔らかく、人当たりの良いしのぶは、他の柱たちと比べても話しやすい人物だろう。
その人柄は、炭治郎が鬼となった妹・禰豆子を連れていたことで柱合会議にかけられた際にも表れていた。問答無用で隊律違反で裁こうとする柱が多い中、炭治郎の言い分に耳を傾けようとしたのも、しのぶだった。
時には言い争いを仲裁したりと、鬼殺隊のまとめ役のような存在のしのぶは、公式ファンブックで明かされたそれぞれの柱からの評価も、好意的なものばかりだ。
なかでも、いつも無口で誤解されがちな水柱・義勇との関係は印象深い。しのぶはよく軽口を言って彼をからかうが、当の本人は「よく話しかけてくれる」と、彼女の気遣いを喜んでいる様子なのだ。
しのぶと義勇のやり取りはファンの中でも人気があり、「那田蜘蛛山編」の「そんなだから みんなに嫌われるんですよ」と言うしのぶに「俺は嫌われてない」と義勇が返すシーンは特に有名だろう。
また、同じく女性の柱である恋柱・甘露寺蜜璃とは、特に親しい間柄であることがうかがえる。蜜璃のことを「大好き。明るくて可愛いから。」と評価するしのぶに対し、蜜璃も「とっても可愛い! 私の方がお姉さんだけどしのぶちゃんの方が落ち着いてる。」「女の子同士で一緒にもっと遊びたいけど時間がないの〜。」と、評価している。
2名しかいない女性の柱であるしのぶと蜜璃。彼女たちが行動を共にするシーンは少ないが、心の中ではお互いを想いあっていると思うと、ホッと心が温かくなる。
鬼殺隊の隊士だけでなく、敵である鬼の過去までもが丁寧に掘り下げて描かれている『鬼滅の刃』。物語が進むにつれて、胡蝶しのぶの過去や因縁も、少しずつ明らかになってきた。
いよいよ最終決戦の火蓋が切られる「無限城編」で、しのぶはどんな戦いを見せるのか。その生き様を劇場で見届け、目に焼き付けたいと思う。