
1980年代といえば、テレビ、アニメ、ゲーム、おもちゃなど、数々のブームが巻き起こったアツい時代。そんな熱狂の真っ只中を生きたのが、昭和47年(1972年)生まれの芸人・土田晃之。“華の47年組”の一人として、子どもの頃に堪能した「昭和カルチャー」を独自の視点で語り尽くします!
■「戦争にいいも悪いもない」クラスメイトが教えてくれたこと
小2のときに登校班の兄ちゃんに教えてもらって観始めた『ガンダム』ですが、そもそもガンダムの面白さに最初に気付いたのは、いまで言う“オタク”の人たちです。オタクの大学生とかがハマって徐々に人気が出始めたんです。
なぜなら話が深いから。小学生の僕らは子どもで、ガンダム観て「いい者と悪者が戦ってて、かっこいいロボットアニメだな」ぐらいにしか思ってなかったけど、中学になってレンタルビデオ店から『劇場版ガンダム』を借りて観たら「こんな話だったっけ?」って。さらに高校になると「え、こういう話だったの!?」……と、大人になるにつれて視点が変わって、もっと深く観られる。だからガンダムはすごい。
そんなガンダムの深さを僕に気付かせてくれたのは、小3のときの「関根さん事件」。ある日の放課後、友だちとガンダムの話をしてたら、同じクラスの関根さんっていう女の子がやってきて、「なんの話してんの?」って聞いてくるから、「女にはわかんねーよ、ガンダムの話してっから」って言うと、「私、ガンダム観てるから」って。
「ウソつけ!」「私、お兄ちゃんいるから」こいつ、絶対ウソついてるよな、と思って、
「じゃあ問題出すけど、ジオン軍と連邦軍、どっちがいい者だ?」って聞いたら、関根さんは、「戦争にいいも悪いもない」……確かに。
「シャアはシャアで戦う理由がある。みんな戦う理由がある。アムロたちだけが正しいわけじゃない」
もう深すぎて。僕ら子どもの見方と全然違う。「こいつ、大人だな……」あの日、放課後の校庭で僕らを大人にしてくれたのは、関根さんです。
ファーストガンダムの続編『Zガンダム』が放送されたのが中1のとき。土曜の夕方5時半から放送されてました。まさに部活の真っただ中、誰も観ないです。中学生なんてちょっと大人に憧れてる年頃だから、誰もガンダムの話なんてしませんでした。アニメオタクみたいなのが学年に1人か2人いて、そいつらが観てるぐらい。
■塾も部活もやめ、ガンダムに捧げた青春
じゃあなんで僕は観てたかっていうと、まさにその時間に塾に行かされてて、嫌でバックレてたんですよ。でも行かないと親に怒られるから、塾に行ってるふりして大宮に遊びに行って、「長崎屋」というデパートの家電売り場でテレビを観てたんです。時間潰すために。そうしたら、なんかガンダムやってる。
「え、ガンダムまた始まったの?」
そのときにたまたま観たのが、第1話の『黒いガンダム』。
「へえ、こんな話なんだ」
翌週も「長崎屋」に行って『Zガンダム』を観る。その翌週も……ってやってるうちに、2カ月ぐらいで親にバレて。しかも3カ月分の塾の月謝払わないで、それ貯めてタミヤのラジコン買ったのもバレちゃって……。結局、塾も辞めて、野球部も辞めて、土曜日の夕方はガンダムを観てました。
『Zガンダム』って僕らが小学生の頃に観てたガンダムと話が繋がってるんですよ。ブライト艦長が出世して登場したりして。その『Zガンダム』が人気出たから、さらに続編を作ることになった。そのせいで『Zガンダム』の後半はバンバン人が死にます。新シリーズが始まるから新キャラクターを登場させたい。でも、いままでの登場人物がいると面倒臭いってことでバンバン死にます。あんな悲惨な終わり方をしてるのは唯一『Zガンダム』だけ。主人公がおかしくなって終わるんですから。
そうして中2のときに始まったのが『ZZガンダム(機動戦士ガンダムZZ)』。僕は相変わらず部活もしないでダラダラしてたから、それも観てました。だから同世代の人よりガンダムのこと知ってるんです。