任天堂公式アンケートでもランクイン、ファミコン『ドラえもん』白カセットじゃない“もうひとつの名作”『ギガゾンビの逆襲』とはの画像
『ドラえもん ギガゾンビの逆襲』(写真/筆者撮影) (C)1990 EPOC CO.,LTD. (C)藤子・小学館・テレビ朝日

 1980年代後半から1990年代初頭にかけて、『ファミリーコンピュータ』(任天堂)では数多くのキャラクター、アニメがゲームになった。特に、1986年に『ドラゴンクエスト』が生まれ、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(ともにエニックス)が社会現象とも言える大ヒットを記録して以降は、追随するようにキャラゲーもRPG化し、多くのキャラたちがコマンドバトルで冒険を進めるようになった。

 そんなRPGブームの中、人気アニメ『ドラえもん』を本格RPG化したのが、1990年にエポック社が発売した『ドラえもん ギガゾンビの逆襲』だ。ファミコンの『ドラえもん』といえば、ハドソンから発売された白カセットのアクションゲーム『ドラえもん』を思い出す人が多いだろう。実際に筆者も幼少期にハドソンの『ドラえもん』にはハマった口だ。

 だが、ファミコンファンの間では名作として位置付けられているタイトルでもあり、任天堂が2024年に実施した公式アンケート「RPGといえば?」でも、『ドラクエ』や『FF』や『MOTHER』などと並び堂々の13位にランクインしているのだ。

 今回はそんな“もうひとつの名作ドラえもん”を、改めて振り返りたい。

※本記事は作品の内容を含みます。

■ガチなRPGでありながら原作を忠実に再現したオリジナルストーリー

 ゲームをはじめると、懐かしい昔の『ドラえもんのうた』をもとにしたBGMが流れる。ファミコン時代はあたりまえだった曲だが、最近めっきり聞くことがなくなったため、これだけでも感動する昭和世代は多いのではないか。

 本作は『映画ドラえもん』である『のび太の魔界大冒険』『のび太の海底鬼岩城』『のび太と竜の騎士』『のび太の日本誕生』のそれぞれの世界を舞台にしたゲーム。映画に登場したキャラクターも再登場し、映画の後日談のようなオリジナルストーリーが描かれる、ファンにはうれしい仕様になっている。

 ハドソン版『ドラえもん』も『のび太の宇宙開拓史』『のび太の大魔境』『のび太の海底鬼岩城』と3つの映画を原作としたアクションだったが、大長編で繰り広げられる冒険劇はゲームのモチーフとしてうってつけということだろう。

 キャラゲーのような印象はあるが、ゲーム内容はしっかりと作り込まれたRPGであり、「ドラえもんをゲームにする以上、下手なゲームは作れない」という意志を感じさせる作りだ。

■原作準拠の秀逸な設定

 そんな本作は、いわゆる『ドラクエ』のようなコマンド入力型RPGであり、レベルは「ゆうき」、HPは「げんき」と表現され、『ドラえもん』の世界に合ったパラメータが使われている。子どもでも楽しめ分かりやすい設定といえるだろう。

 特に秀逸なのは「ドラやき」ではないか。このドラやきは戦闘で勝利を重ねるたびにドラミちゃんからもらえるもので、ひみつ道具を使うためにドラやきを消費するといった、『ドラクエ』でいうMPのような要素。たしかに、MPのような設定は『ドラえもん』の世界観にそぐわない。ドラやきを消費してひみつ道具を使うというのはいいアイデアだ。

 ちなみに、ドラやきとアイテムを交換できるお店もある。本作でのドラやきは、MPとゴールドの両方の役割を果たす珍しいシステムといえるだろう。

 ちなみにセーブするときには、ドラミちゃんを呼ぶ。そして、これまでの戦闘に応じたドラやきをもらうことができるのだ。

 「ドラやきを500個作ったから持って行って」と言われる、がんばりすぎなドラミちゃんの姿が見られる場面だが、このシステムは、『MOTHER』(1989年、任天堂)でのパパに電話することで口座への入金額を教えてもらえるシステムに似ている。

 ファミコン後期の作品ということで数多くの名作RPGがすでに生まれていたこの時代。ひとつひとつの要素を『ドラえもん』タッチにすることで、血生臭くないRPGに仕立て上げているように思う。

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