
1984年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が開始され、数々の熱い戦いと驚きの展開で世界中のファンを魅了してきた鳥山明さんの名作バトル漫画『ドラゴンボール』。
しかし、その壮大な物語の裏側には、原作の漫画では回収されなかった「謎」がいくつも残されていた。
のちのアニメシリーズや公式書籍などで明かされたものもあれば、その一方、今なお明確な答えが語られていないものも存在する。
今回は、そんな『ドラゴンボール』に秘められた謎を、公式設定や作中の描写をもとに考察を交えて紹介していきたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■なぜベジータは再び尻尾が生えてこなかった?
サイヤ人の身体的特徴のひとつに「尻尾」がある。この尻尾は、たとえ切断されても一定期間を経れば自然に再生する特性を持っており、原作漫画では主人公・孫悟空が2度、その息子・悟飯も1度再生している。
こうした前例を踏まえると、ベジータのケースはやや異質だ。地球で大猿化した際に尻尾を切られて以降、彼の尻尾はその後一度も再生していない。「惑星フリーザNo.79」でメディカルマシンによる治療を受けた際、再生しなかった尻尾について本人は「かまわん そのうちはえてくる…」と語っており、再生を見込んでいたようだが……。
では、なぜベジータの尻尾は再び生えてこなかったのか?
ここで注目したいのが、悟天やトランクスといった、サイヤ人と地球人の親から生まれた子どもの存在である。彼らは、生まれつき尻尾を持っていない。
この点について『ドラゴンボール大全集』4巻では、サイヤ人と別の星の住人の子どもで生まれつき尻尾がなく生まれてきた者は「特に強大な戦闘力を秘めており〜」といった記述が見られる。
このことから、“ある程度以上の戦闘力を持ったサイヤ人には、もはや尻尾は不要で、生えてこなくなる”という仮説が成り立たないだろうか。
大猿化に必要な部位である尻尾も、本人の戦闘力がそれを大きく上回れば、進化の過程で役割を終えるのかもしれない。
実際、ベジータは地球での戦い以降、気のコントロールを習得し、戦闘力を飛躍的に向上させていた。尻尾の再生がされなかったのは、彼がサイヤ人の戦士として“次の段階”へと進化した証だったのかもしれない。
■なぜドクター・ゲロが人造人間16号の起動を恐れたのか?
人造人間16号は、ドクター・ゲロが造り出した人造人間の中でもトップクラスの戦闘力を誇る。それにもかかわらず、ゲロは16号を「失敗作」と断じ、その起動を頑なに拒んだ。17号と18号が眠っている16号を見つけ、興味を示した際には「ぜったいに動かすんじゃない!!!」と声を荒げて取り乱したほどだ。
ゲロはなぜ、ここまで16号の起動を恐れたのだろうか?
理由としてまず考えられるのは、16号の“戦いを好まない、あまりにも穏やかすぎる性格”だろう。戦闘兵器としては致命的とも言えるこの性質は、ゲロにとっては思い通りに動かせない「制御不能な存在」に見えていた可能性がある。
さらに興味深いのは、16号がほかの人造人間と異なり、人間ベースの「バイオタイプ」ではなく、完全機械の「メカタイプ」であること。そして、その外見のモデルが、ゲロの実の息子であり、かつてレッドリボン軍の兵士として戦死した「ゲボ」だったとされている点だ。
もしかすると、「息子には平和に生きてほしい」というゲロの無意識の願いが16号の性格に投影されていたのかもしれない。そう考えれば、16号を起動したくなかった理由は、単なる「失敗作」ではなく、今度こそ息子を死なせたくないという“親心”の表れだったとも解釈できる。
もっとも、無数の命を奪ってきたマッドサイエンティストとしては、あまりに人間味がありすぎる解釈ではあるのだが……。