
定められたルールのなかで勝ち負けを競い、結果次第では命を落とす危険もある「デスゲーム」。生き死にを賭けたシビアでスリリングな展開もさることながら、多くの場合、ゲームクリアとともに多額の報酬を獲得でき点も、人々を惹きつけてやまない魅力だろう。
近年、数多くの漫画作品でデスゲームが描かれているが、なかにはあまりにも過酷かつ理不尽な内容で、読者をひやりとさせてしまう苛烈なものも少なくない。
そこで、どれだけ報酬を積まれても「絶対にやりたくない!」と思ってしまう、あまりにもシビアなデスゲームの数々を見ていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■明暗を分けるのはたった一本の鉄骨…『賭博黙示録カイジ』鉄骨渡り
1996年に『週刊ヤングマガジン』(講談社)で連載が開始された『賭博黙示録カイジ』は、自堕落な青年・伊藤開司(通称:カイジ)が多額の負債を抱え込んだことをきっかけに、命がけのゲームへと身を投じていくギャンブル漫画だ。
福本伸行氏の代表作として知られる本作には、手に汗握る命を賭けたギャンブルの攻防はもちろん、そこに描かれる人間模様、金や人生にまつわる名言の数々など見どころの多い一作だ。
本作には常軌を逸した危険なデスゲームが多数登場するが、なかでも見た目のインパクト、ルールの分かりやすさから圧倒的な知名度を誇るのが「鉄骨渡り」だろう。
物語序盤で描かれたこのギャンブルは、その名の通り高所に配置された一本の鉄骨の上を渡り、向こう岸に辿り着くことで勝利となる。
当初、カイジが参加したゲームは「人間競馬」というルールが設定されており、他の参加者より先に鉄骨を渡りきる必要があった。しかし、鉄骨は人一人が通れるぎりぎりの幅であるため、勝利のためには前を行く人間を蹴落とさなければならないという、容赦ない手段が要求される。
高所ゆえ、落ちてしまえば骨折などの怪我は免れないのだが、実はこれはまだまだ序の口に過ぎなかった。
続いてカイジらが挑戦した「電流鉄骨渡り」では、なんと地上74mのビル同士を繋ぐ鉄骨が舞台で、これを渡ることとなるのである。当然、命綱などあるわけもなく、足を踏み外せばまっさかさま……奇跡でも起こらない限り、まず生還は不可能だ。
しかもこの鉄骨、タイトルの通り電流が流れているため、手をついて踏ん張ることすらできない。まさに、己の足のみで渡りきることが要求されるのだ。
渡りきって大金を手にするか、それとも落ちてあの世行きか……たった一本の鉄骨が天国と地獄を分ける、なんとも恐ろしいデスゲームだ。
■歴史上に登場するおぞましい拷問器具…『嘘喰い』ファラリスの雄牛
2006年より『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて連載された、迫稔雄氏の『嘘喰い』は、ギャンブル勝負と激しい暴力のぶつかり合いをミックスさせた、独特の作風が特徴のギャンブル漫画だ。
緻密な頭脳戦はもちろん、力で勝利をもぎ取ろうとする迫力あるバトル描写、数々の勢力が入り乱れる権力争いと、多角的な魅力で多くのファンを魅了している。
本作にも数々のデスゲームが登場するが、なかでもルールの壮絶さと苛烈な描写で読者を震え上がらせたのが、「ファラリスの雄牛」というギャンブルだ。
これは、相手がストップウォッチを何分何秒で止めたかを当てる、いわゆる時間当てゲーム。プレイヤーは自身の感覚を頼りに経過時間を言い当てるのだが、ぴたりと当てるのは至難の業で、どうしても回答と正解の間に誤差が生まれてしまう。
この誤差はペナルティとして蓄積され、「実行権」を得たプレイヤーの選択によっては、この時間を元にある刑を執行できるのだ。
その際に使われるのが、ゲームの名称にもなっているファラリスの雄牛である。
これは古代ギリシアで開発されたという伝承の処刑や拷問のための器具で、見た目は金属製の牛の像そのもの。だが、この像の内部には人が入れる空洞があり、刑を執行されるプレイヤーはここに入れられることとなるのだ。
このゲームでは蓄積した誤差時間分、像を炎で熱し、内部の人間が焼かれてしまう。
プレイヤーは像の口元と繋がった管によって呼吸し、熱さと痛みに耐えるのだが、その苦しみはまさに想像を絶する。
ゲームの内容もさることながら、この装置が漫画のなかだけの存在ではないかもしれない……というおぞましい歴史にも戦慄してしまう。