『SLAM DUNK』田岡監督の陵南ドリームチームは海南に勝てるのか? 宮城・三井・流川・仙道・魚住の布陣を徹底検証の画像
『SLAM DUNK』DVD-Collection  (C)井上雄彦・アイティープランニング・東映アニメーション

 1990年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された、井上雄彦氏による『SLAM DUNK』。高校バスケ界を舞台に描かれた本作には魅力的なキャラクターが多く登場するが、各チームを率いる監督たちもまた、印象的なキャラクターが多い。

 なかでも、主人公・桜木花道が属する湘北高校と激闘を繰り広げ、惜しくもインターハイ出場を逃した陵南高校の田岡茂一監督は、ファンの間でも人気の高いキャラクターの1人である。

 ところで、そんな田岡監督が秘かに描いていた「C:魚住純、F:仙道彰、F:流川楓、SG:三井寿、PG:宮城リョータ」という、“夢のチーム”のことを覚えているだろうか。

 実際はリクルートに失敗し、このドリームチームは幻となってしまった。だが、もし構想が実現していたら……その破壊力は全国でもトップクラスの実力だった可能性が高い。

 では、そんなドリームチームが、神奈川県の絶対王者・海南大附属高校と激突していたとしたら、どのような試合展開となっていただろうか。今回は「田岡監督が描いた夢の最強チームVS海南大附属高校」の勝敗の行方を考察していきたい。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■サプライズ「仙道PG起用」はあり得るのか?

 まず注目したいのは、原作の陵南VS海南で田岡監督が仕掛けたサプライズ、“仙道彰のポイントガード(PG)起用”だ。しかし、このドリームチームにおいて、この奇策はないと筆者は考える。

 その最大の理由が、宮城の存在だ。県内でも屈指のスピードとゲームメイク力を誇る彼をわざわざ控えに回す理由は見当たらないし、ましてや身長の低い宮城を別のポジションで起用するメリットもない。

 さらに、本来の陵南PG・植草智之とは対照的な、負けん気の強い宮城の性格を踏まえれば、県ナンバー1のPG・牧紳一との直接対決をあっさり仙道に譲るとも思えない。田岡監督も「牧を倒してお前が県内ナンバー1のPGになれ」などと檄を飛ばし、宮城の闘争心に火をつけ、成長を促すのではないだろうか。

 となれば、この勝負のカギを握るのは、宮城がどこまで牧に食らいつけるかだ。原作の湘北VS海南では、宮城は前半こそ善戦していたが、後半になると牧のフィジカルと経験に押し切られてしまっていた。

 このドリームチームでも、後半から三井を交えたダブルチームなどの対応策はあると思うが、牧が切り込み、神宗一郎が外から3Pを沈める「中から牧、外から神」という海南の鉄板パターンに持ち込まれる展開は十分にあり得る。

 仙道PGという奇策に頼らない以上、正面から牧とぶつかる宮城の奮闘こそが、この一戦のリズムを左右する最初のポイントとなるだろう。

■「不良にならなかった三井」はもっと強かった?

 この試合において、三井は“安定したプレーヤー”として絶大な存在感を見せるだろう。

 もし三井が陵南に進学していたとしたら、ケガによる一時的な離脱があったとしても、2年間のブランク、すなわち“不良”への道は避けられていた可能性は高い。

 というのも、三井の心には「安西先生に認められたい」という強い思いがあり、不良になったのも、その裏返しだった。湘北という環境だからこそ味わった挫折であり、だからこそ生まれた再起の物語でもあったのだ。

 田岡監督の指導のもと、陵南で地道に練習を積み重ねていれば、原作で大きな課題となったスタミナ不足も解消されていただろう。そうなれば、この海南戦でも一試合通じて安定したオフェンスでチームに貢献するはずだ。さらにスタミナが十分であれば、ディフェンスでも湘北VS海南で桜木が担っていたような神への徹底的なマークを担う展開もあり得るかもしれない。

 ただし、そこにはひとつ、見過ごせない“代償”もある。それは、逆境でこそ輝く“三井らしさ”だ。体力の限界を超えたその先で発揮された神がかった3P成功率は、湘北で深い絶望や挫折を味わったからこそ生まれるもののように感じてしまうのだ。

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