「美しいのがむしろ怖い…」伊藤潤二のホラー名作『富江』実写化ヒロインを演じた歴代女優の「最恐シーン」の画像
菅野美穂  写真/ふたまん+編集部

 2025年7月、ホラー漫画の巨匠・伊藤潤二氏がアメリカの名誉ある漫画賞「アイズナー賞」で殿堂入りを果たした。『うずまき』『死びとの恋わずらい』など、世界中に熱狂的なファンを持つ氏の代表作のひとつが、1986年のデビュー作にして今なお根強い人気を誇る『富江』だ。

 “絶世の美女でありながら、何度殺されても甦る”という強烈なキャラクターは、日本だけでなく海外でも多くの読者にトラウマを植え付けてきた。そんな『富江』は、1999年以降、たびたび実写映画化されており、数多くの人気女優たちによってヒロイン「富江」が演じられてきた。

 それぞれに異なる“富江像”をまとい、圧倒的な美貌と恐怖を表現した女優たち。今回は、歴代の「富江」を演じた女優たちの名演技と、鳥肌ものの恐怖シーンを振り返りたい。

※本記事は作品の内容を含みます。

■菅野美穂による最初の実写「富江」

 これまで富江を演じたのは菅野美穂さん、永井流奈さん、宝生舞さん、酒井美紀さん、安藤希さん、松本莉緒さん、 伴アンリさん、あびる優さん、松岡恵望子さん、仲村みうさんだ。彼女らが演じた個性豊かな富江はそれぞれイメージもかなり異なっていて、作品テイストも異なるのが面白い。

 まずは1999年、初めて実写化された映画『富江』で、富江を演じたのが菅野美穂さんだった。

 今作での富江は3年前に失踪した女生徒であり、段ボールの中で育てられる生首として登場する。やがて富江は再生して1人の美女の姿となっていくが、持ち前の魔性さと無邪気さで男性を翻弄していく富江を演じる菅野さんの演技が見事ハマっていた。

 この『富江』の異色なのは、富江が本性を表すまで一切顔を見せないところ。この演出によって不気味さがじわじわと伝わるとともに、菅野さんの圧倒的な存在感が増す。公開されたのはJホラーブームに沸く1990年代末。他作品に比べても抽象的で終始静かなムードの漂う菅野さんの富江が、世紀末の少し暗いイメージにハマっていた。

 続いては、2000年公開の、宝生舞さんが演じた『富江 replay』を振り返りたい。2作目の実写版『富江』は、原作の「森田病院編」とその続編である「地下室」をベースとしており、この富江は緊急手術中の腹から生首として生まれる。

 前作よりホラー演出が派手になっており、天井に貼り付くなど、ホラーヒロインとして大活躍する富江の姿を楽しむことができるのも魅力。宝生さんのキリッとした顔立ちが富江の存在感にハマっており、水槽の中で研究されている富江のビジュアルは特段に美しかった。

 ちなみに、本作と同時上映されたのは、これまた伊藤氏の傑作と名高い『うずまき』。今や世界中にファンを持つ伊藤潤二作品の珠玉の2作が実写で楽しめるとは、なんと贅沢な映画体験だろうか。

 そして、2001年には原作の「滝壺」「画家」「毛髪」などの要素を取り入れた3作目『富江 re-birth』が公開されており、酒井美紀さんが富江を演じている。

 本作は、ある男が絵のモデルにしていた富江を発作的に殺害し、2人の友人とともに山に埋めにいくところからスタートする。その後、富江は復活し、3人の男たちの前に現れて復讐をするストーリー。ビデオ版『呪怨』でホラーファンの間で高い評価を集めていた清水崇氏の映画監督デビュー作でもある。

 『富江』は解体される場面が多く出てくる作品でもあるが、生首から手が生えただけの富江はなんだかシュールでかわいらしい。酒井さんの富江はお嬢様感が強く、これまでのイメージとはまた違った富江像を見せてくれた。

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