
吉住渉氏のヒット作『ママレード・ボーイ』は、1992年から『りぼん』(集英社)で連載が開始された作品だ。90年前半「りぼん黄金期」を支えた代表作の1つで、イケメンとの同居生活という少女たちの“夢”を詰め込んだかのようなストーリーは人気を博した。
その後、テレビアニメ化や実写映画化などさまざまなメディア展開もおこなわれた本作だが、それぞれオリジナル展開もあり、原作とは大きく違った部分もあった。
そこで今回は『ママレード・ボーイ』について原作と比べつつ、アニメ版や実写版でどんな結末が描かれていたのか振り返っていこう。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます
■光希と遊はどうなった?原作漫画の結末はハッピーエンド
まずは、原作漫画のストーリーをおさらいしておこう。
両親がW離婚・W再婚するという奇想天外な騒動に巻き込まれた主人公・小石川光希と松浦遊。“両親S”とそれぞれの子どもである高校生の光希と遊、6人での同居生活が始まり、2人は次第に惹かれ合っていく。
長年、光希に片想いをしていた須王銀太のアプローチもあり揺れ動く光希だったが、最終的に彼女は不器用ながらも優しい遊を選んだ。
恋人同士となり幸せな生活を送っていたのだが、その矢先、遊の本当の父親が光希の父親・仁である可能性が浮上……。遊は光希と異母兄妹かもしれないという疑惑を持ち、その真実を隠して彼女の元から去ってしまう。
1人で秘密を抱えたまま京都の大学へ進学する遊。しかしいつまでも健気に自分を想い続けてくれる光希に心を動かされた遊は、堪らず光希を抱き締め、秘密を打ち明ける。そして、恋人としての最後の思い出作りに、2人で旅行へ出かけるのだった。
旅行であらためて気持ちを確かめ合った光希と遊は、帰宅後、両親Sに結婚する意思を伝える。そこで遊の母・千弥子から遊の父親は仁ではないことが明かされて兄妹疑惑も晴れ、堂々と恋人同士として生きていくというハッピーエンドを迎えた。
自身の出生について誰にも聞くこともできず、手がかりを頼りに奔走していた遊。作中ではその心理描写も丁寧に描かれており、胸が張り裂けるような思いも痛いほど伝わってきた。当時、本作を読んでいて、2人の未来が明るく照らされた結末にほっと胸を撫でおろしたのは筆者だけではないはずだ。
■オリジナルアイテムやキャラが多数! アニメ版は遊がアメリカへ
1994年3月から始まったテレビアニメ『ママレード・ボーイ』は、全76話が放送された。アニメ版では、アニメオリジナルの設定やキャラクターがふんだんに盛り込まれており、原作では見られない展開に驚いたファンも多いだろう。
一番大きな違いは、遊が高校在学中にアメリカへ留学する展開だ。遠距離恋愛になってしまった光希と遊は、遊が留学先で美少女・ジニーに迫られたりして次第にすれ違い、破局の選択をすることに。
一方、光希は留学生・マイケルや、アルバイト先の後輩・土屋蛍からアプローチを受け、失恋の傷を優しく癒してくれた蛍と付き合うこととなる。その間、遊から蛍へと即座に乗り換えたことで銀太に問い詰められたりしながらも、光希は蛍と穏やかな日々を過ごしていた。
だが、どうしても遊への想いを断ち切れず、遊もまた、蛍と親密な様子の光希を見てあらためて自分の気持ちを自覚し、2人は復縁するのだった。
そしてその後は原作同様、異母兄妹疑惑が浮上し、遊から別れを告げられる展開に繋がっていく。
このように、アニメ版では光希と遊は2度破局を迎えており、光希は蛍と付き合うというオリジナル展開もあった。また、遊のアメリカ留学時に出会う友人たちや遊の幼馴染・北原杏樹、光希の高校の教師・桃井亮子など個性豊かなオリジナルキャラクターも多く登場し、物語を彩っていた。
さらにアニメ版では、オリジナルアイテムも多く登場する。光希と友人・秋月茗子が交換ノートと一緒に秘密のメッセージを送り合っていたロボット形の「ボイスメモ」や、好きな人の写真を入れると思いが届くジンクスのある「メダイユ」などのアイテムは、実際にグッズも販売され大ヒットとなった。
結末は原作と同じハッピーエンドを迎えたアニメ版だが、異母兄妹と知って遊がニューヨークに戻ってしまったり、遊に会うためにアメリカを訪れた光希が遊から「オレたちは兄妹なんだ!」と明かされ、ショックで行方不明になってしまったりとハラハラする展開も非常に面白い。ぜひ原作とは違う描写に注目しながら見てみてほしい。