■見た目、動き、強さ、すべてがトラウマ級…『ファイナルファンタジーVII』イン・ヤン

 PlayStationの登場により多くのタイトルが3D化するなか、1997年発売の『ファイナルファンタジーVII』もまた、ポリゴンを活かした奥行きのある映像表現で、多くのファンを圧倒した。本作では冒険のなかで対峙する敵キャラクターたちも3Dで表現されており、これまで以上の躍動感を持ってプレイヤーに襲い掛かってきた。

 なかでもプレイヤーに予想だにしない恐怖を与えた敵キャラが、神羅屋敷の地下で遭遇する「イン・ヤン」である。

 白い肉体とアンバランスな長さの手足を持つ人型のモンスターで、最大の特徴は一つの体に二つの頭という奇妙なディテールである。毛髪のない頭部はつぶらな目と口のみのシンプルなデザインだが、その無機質な表情が“人ならざるもの”の独特の異質さを際立たせている。

 緩慢な動き、時折ガクガクと体を震わせる不穏なモーション、そして薄暗いフィールドも相まって、通常のバトルとは明らかに異なる不気味さがプレイヤーを襲う。

 ちなみにこのイン・ヤン、あくまで通常モンスターの扱いなのだが、ほかの雑魚敵に比べてHPや攻撃力が高く、そのうえ動きが遅いため行動終了までに時間がかかるなど、まともに相手取ると精神的にも摩耗させられる相手であるのだ。

 エンカウント率が低いのが唯一の救いだが、異形の見た目と高い実力は、まさに怪物級の敵キャラクターであった。

 

 『ファイナルファンタジー』シリーズにおいて敵キャラクターたちは欠かすことのできない存在だ。なかにはその強さ以上に、恐ろしい見た目や演出でプレイヤーの心に深く刻まれているものも多い。

 巨大な球体人形、猛追してくる列車、二つの頭を持つ怪物……いずれも、一度見たらなかなか忘れられないインパクト大な姿ばかり。彼らが放つ不気味さや恐ろしさもまた、シリーズのハイクオリティな映像表現を存分に活かした結果と言えるのかもしれない。

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