すべてが山王戦でのラストパスに繋がった…『SLAM DUNK』実は誰よりも桜木を認めていた? 終生のライバル・流川の言動を考察してみたの画像
『SLAM DUNK』Blu-ray Collection VOL.2(東映ビデオ) ©井上雄彦・アイティープランニング・東映アニメーション

 1990年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された、井上雄彦氏による名作漫画の『SLAM DUNK』。作中には魅力的なキャラクターが多く登場するが、なかでも主人公・桜木花道と流川楓は、終生のライバルであり、“犬猿コンビ”としても有名だ。

 バスケ初心者である桜木に対し「どあほう」などと、何かと上から目線で物を言う流川。だが実は流川こそ、誰よりも早く、そして深く、桜木を認めていたのではないだろうか。

 そこで本記事では無口で不器用ながらも芯のある流川の言動を通して、彼がいかに桜木の成長と実力を認めていたかを読み解いていきたい。湘北のエースであり、時に最大のライバルでもあった流川の視線の先にあったものとは?

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます

 

■初バスケですでに見抜いていた? 素人・桜木のポテンシャル

 結果的に見れば桜木は、バスケ部入部からわずか4カ月で全国レベルに到達した“超逸材”である。しかし最初はルールすら知らない完全な素人だった。そんな桜木に対し、入部前の段階で流川がすでに“何か”を感じ取っていたことがうかがえる描写がある。

 それはコミックス1巻、桜木とバスケ部キャプテン・赤木剛憲による即席の1on1勝負でのこと。

 その前に屋上で桜木と殴り合いのケンカをしていた流川は「桜木」の名を耳にして、体育館へ足を運ぶ。

 普段なら他人の騒動など気にも留めなさそうな流川だが、このときは野次馬の生徒たちに混ざり桜木のプレイを興味深く観戦していた。「フンフンディフェンス」に驚き、バックボードを使った変則的な「ダンク」に感心する様子……。そして帰り際には「やるじゃん桜木…」と、内心で評価するようなシーンまで描かれていた。

 中学時代から有名プレイヤーとして注目を集めていた流川にとって、このときの桜木のプレイは明らかに素人のそれである。だが、赤木を相手に一歩も引かない闘志や常識外れの身体能力を目の当たりにし、この時すでに桜木に“ただの素人”ではない何かを見出していたのではないだろうか。

■「どあほう」だけじゃない! 的確な叱咤で支え続ける

 湘北の快進撃を語るうえで欠かせないのが、桜木の急成長だ。そして、それを誰よりも意識し、支えていたのが流川だった。

 たとえば、桜木の人生初の試合となった陵南との練習試合にて。流川は、極度の緊張に呑まれガチガチになっていた桜木の尻を蹴り上げ「どあほう このいつまでもガチガチキンチョーしまくり男」と一喝。荒っぽいながらも桜木はこの衝撃で本来の動きを取り戻し、輝きを見せはじめる。

 その後、仙道彰に挑んだダブルチームの場面では「よそ見すんな」「腰を落とせ!!」「足を動かせ!!」「相手の目を見ろ!!」と、専属コーチさながらの的確な指示を連発。桜木は反発しつつも、そのアドバイスにしっかりと応えていた。

 さらにインターハイ神奈川県予選・翔陽戦では、ファウルトラブルで萎縮した桜木に「らしくねーんじゃねーのか」と声をかけ、海南戦後には、痛恨のパスミスに落ち込む桜木へ「うぬぼれんな どあほう」と叱咤。

 そして、インターハイでの山王戦。ルーズボールに飛び込み負傷した桜木の異変にいち早く気づき「集中力が足りん」と、声をかけたのも流川だった。

 何かと言えば自分と張り合い突っかかってくる桜木だが、それでも流川は常に彼の状態をよく見ており、必要なときには必ずと言っていいほど声をかけている。その言動の裏には、桜木のことを湘北に必要不可欠な戦力であると認め、期待をしていたからこそだろう。

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