
アニメや映画などにおいて「ラスボス」は、物語のクライマックスを飾る“最強の敵”として欠かせない存在だ。
それまで主人公の身近にいた人物がラスボスであったり、ラスボスとの戦いで主要キャラが命を落としたりなど、彼らの登場はおおいに物語を盛り上げてくれる。
だが、なかには圧倒的な強さだけでなく、その正体までもが視聴者の常識を覆すような異色のラスボスが登場することもある。
今回は、そんな“予想外の正体”で物語そのものの印象をガラリと変えてしまった作品を紹介したい。まさかの展開に度肝を抜かれた、あのクライマックスを振り返ってみよう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■本シリーズを象徴するアイテムがラスボスに!?『ドラゴンボールGT』
1996年から放送された『ドラゴンボールGT』は、鳥山明さんの『ドラゴンボール』、『ドラゴンボールZ』のその後を描いたアニメオリジナル作品だ。
悟空とブルマの出会いに始まり、数々の奇跡をもたらしてきた「ドラゴンボール」だが、本作の最終章では、その力の裏に潜んでいた重大なリスクが明かされた。
それは、願いを叶えるたびにドラゴンボール内部に“マイナスエネルギー”が蓄積されていき、その負の力が限界を超えたとき「邪悪龍」と呼ばれる存在が誕生するという衝撃的な真実だった。
7匹の邪悪龍の中でも最強にしてラスボスとして立ちはだかったのが、一星球の化身である「一星龍」であった。彼を生み出したマイナスエネルギーの元となったのは、「フリーザ一味に殺された人々を生き返らせる」という、シリーズ屈指の重大な願い。
かつて多くの命を救ったその願いが、皮肉にも最強の敵を生み出すきっかけとなったわけである。一星龍は「貴様等はドラゴンボールを使いすぎた」と悟空たちを断じ、圧倒的な力でその乱用の“ツケ”を突きつける。
希望の象徴だったドラゴンボールが、最終的には人類へ牙を剥く存在となる。その衝撃的なラストは、多くの視聴者にとって予想外でありながら、当時『ドラゴンボール』というシリーズを締めくくるにふさわしいラスボスであったのかもしれない。
■ラスボスはシリーズ初の宇宙人!?『機動戦士ガンダム00』
アニメ『機動戦士ガンダム00』は、戦争根絶を掲げる私設武装組織「ソレスタルビーイング」のガンダムマイスターたちの戦いを描いた、本格派ガンダム作品である。
2007年にファーストシーズン、2008年にはセカンドシーズンが放送され、シリーズを通じて「人類がいずれ直面するであろう“来るべき対話”」というテーマが物語の軸となっていた。
そして2010年に公開された完結編『劇場版 機動戦士ガンダム00-A wakening of the Trailblazer-』では、ついにその“来るべき対話”の真相が明かされる。
ここで登場したのが、本作のラスボス・地球外変異性金属体「ELS」だった。
木星近くのワームホールから突如出現し、地球へと進行を開始するELS。その正体は、金属生命体であり、自由自在に形を変え、身体は撃ち込まれたミサイル、さらにはモビルスーツや戦艦までも吸収し、模倣してしまう。
これまでのシリーズでは「地球連邦軍」と「ジオン公国軍」のように人類同士の戦争が主軸として描かれてきたが、ここにきてまさかの“地球外生命体との接触”というシリーズ初の展開となった。
監督を務めた水島精二さんも「誰もやってこなかったこと。これはガンダムなのか、という批判はあると思う」と語っており、その大胆な挑戦がうかがえる。それほどまでにELSという存在は、まさにシリーズの常識を覆す異色のラスボスだった。