■Z計画の末期にコンペに勝利した意外な機体

 テレビアニメ『機動戦士Zガンダム』の時代では、カミーユ・ビタンが所属した「エゥーゴ」と、当時の兵器開発を一手に担おうとしていた「アナハイム・エレクトロニクス社」による共同の新型MS開発計画「Z(ゼータ)計画」が推進された。

 『週刊ガンダム・モビルスーツ・バイブル04号』(デアゴスティーニ・ジャパン)によれば、敵対するティターンズに比べてエゥーゴの戦力不足は否めず、単機で高性能かつ多機能なモビルスーツ開発が急務だったのである。

 そのZ計画で生まれたのがリック・ディアス、百式、メタス、Zガンダムといった機体たちである。

 フラグシップ機であるZガンダムの完成後は、Z計画でも当然ながら量産化の動きが生まれる。もちろん高性能を誇るZガンダムの量産化が考えられ、「量産型Zガンダム」の計画が持ち上がった。

 しかし、Zガンダム自体が複雑な可変機構を有し、それを廃したところで量産には向かない機体だった。そこで同じく量産化の候補にあがった「量産型百式改」のほうが採用されたのである。

 また、ゲーム『SDガンダム Gジェネレーション ジェネシス』(バンダイナムコエンターテインメント)の量産型Zガンダムの解説文には「予定ほどのコストダウンが実現せず」とあり、百式改のほうが選ばれた背景には費用面の理由もありそうだ。

 ただし、このコンペはあくまでアナハイム内コンペであり、その後の世代の地球連邦軍で制式採用された主力量産機は「ジェガン」である。その流れから考えても社内コンペに勝った量産型百式改だが、さほど量産されなかったものと思われる。

 

 今回はガンダム史における、モビルスーツのコンペティションにまつわるエピソードを振り返ってみた。それぞれのコンペの背景には、機体性能の優劣だけでなく、企業間や政治的な思惑なども絡んでくるのが興味深い。まるで現実社会のコンペを見ているようであり、リアリティを感じられるおもしろいドラマといえるのではないだろうか。

  1. 1
  2. 2
  3. 3