ヅダやギャン…悲運のMSも!? ガンダム史に残る「主力MSコンペ」軍需企業の命運をかけたガチンコ勝負の行方は?の画像
欠陥さえ克服できていたらザクIではなく、このヅダが量産されていたかも? 「HGUC 1/144 ヅダ」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 皆さんは「コンペティション」という言葉をご存知だろうか。「競争」や「競技会」を意味し、「ゴルフコンペ」や「デザインコンペ」など一般的に使われることも多い。複数の何かを競わせ、その優劣を決める取り組みのことを指している。

 実はガンダムの歴史の中でコンペは幾度も行われており、モビルスーツ等の開発計画において、どの機体を次期主力機に据えるのかなどを決める重要イベントとして実施されている。

 そこで今回はガンダム作品で行われた印象的なコンペティションを取り上げ、その内容や結果などを振り返ってみたい。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■記念すべき初の主力MSコンペ

 『ガンダム』シリーズの歴史上、一番最初に行われたモビルスーツの制式採用を決めるコンペティションは、宇宙世紀0075年に実施された。ジオン公国軍における「ザクI(YMSー05)」と「ヅダ(EMSー04)」が競合、制式採用を争ったのである。

 「ジオニック社」が開発したザクIと、「ツィマッド社」が開発したヅダ。書籍『総解説ガンダム辞典』(講談社)によれば、性能面ではヅダがザクを圧倒したという。

 しかしヅダは、公式の飛行性能試験中に空中分解事故を起こしてパイロットが死亡。また、機体の生産コストもザクIの1.8倍ほどかかることから、ザクIが採用された。

 ツィマッド社が開発したヅダ搭載の「木星エンジン」は、大推力を誇りながらノズルの方向を任意に動かして推進力を得る方式を採用。その圧倒的なパワーゆえに機体の強度不足という別の問題を引き起こしてしまう。

 しかしツィマッド社はこの木星エンジンで得たデータをもとに、新型の「土星エンジン」を開発。こちらは「ドム」や「リック・ドム」に採用された。

 こうしてヅダによるコンペ敗北を糧にして生まれたリック・ドムは、次期主力宇宙戦用モビルスーツの開発コンペにおいて、ライバルの「高機動型ザクII(R-2型)」に勝利して制式採用。その礎となったヅダは、いろいろな意味で「生まれるのが早すぎた」機体だったのだろう。

■「対ガンダム」を想定したコンペの行方は……!?

 アニメ『機動戦士ガンダム』の主人公機「ガンダム(RXー78ー2)」の性能に衝撃を受けたジオン軍では、次第にビーム兵器を求める声が大きくなる。

 その要望を受けて、ビーム・ライフルを装備する「ゲルググ(MS-14)」が誕生。一方、ツィマッド社が第2期主力MS開発計画に基づいて開発したのが「ギャン(YMS-15)」である。

 このゲルググとギャンがジオンの次期主力モビルスーツを決めるコンペで争ったとされるが、機体の汎用性の高さや、宇宙空間を想定した戦闘能力、そして要望のあったビーム兵器を備えていた点が高く評価され、ゲルググが大差をつけてギャンに勝利したという。

 劇中でギャンに搭乗したマ・クベの戦い方を見ても分かる通り、ギャンは白兵戦に秀でた機体であり、遠距離武器はニードルミサイルとハイド・ボンブ(機雷)のみという尖った構成。一方ゲルググはビーム・ライフルがあることで、一応、学徒兵にも扱えるほど汎用性が高かった。

 どう考えても主力モビルスーツには適してなさそうなギャンで、本当にコンペに勝つつもりがあったのかは不明。『機動戦士ガンダム 公式百科事典』(講談社)にも「コンペは慣例であり、結果は決まっていた」という記述があり、最初からゲルググの量産は決まっていたのかもしれない。

 なお、マ・クベ自身も劇中でギャンのことを「私用に開発していただいたモビルスーツ」と発言していた。

 そのギャンは、『ガンダム』シリーズのテレビアニメ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』にて、少数ながら量産されていた。初代『ガンダム』の世界以上にマ・クベの発言力が増したことが影響したのだろうか。

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