弟のために体を張った小兵二、生徒を守って辞めた教師・竹原も…『ろくでなしBLUES』喧嘩・ギャグの合間に挟まれた「脇役たちの意外な名シーン」の画像
(C)東映・集英社・東映アニメーション (C)森田まさのり/集英社・東映アニメーション

 1988年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された、森田まさのり氏のヤンキー漫画『ろくでなしBLUES』。主人公・前田太尊を中心に男子高校生たちの喧嘩、友情、恋愛などを描いた熱い名作だ。

 基本は喧嘩やギャグシーンが多い本作だが、時に感動的なストーリーもあり、当時はおおいに泣かせてもらったものだ。

 特に印象的だったのが、太尊の通う帝拳高校の数学教師であり、ボクシング部顧問の近藤真彦(通称:マサさん)のエピソードである。

 レスリングのオリンピック出場が内定しているにもかかわらず、親友の彼女が交通事故に遭い、AB型RH(ー)の血液が必要となった際、その彼女のためにオリンピック出場を犠牲にして輸血を即断。しかも、それを誰にも伝えないよう担当医に頼み込む姿は、涙なしでは見られなかった。

 そんな本作には、マサさんのほかにも個性豊かな脇役が数多く登場する。今回は、彼ら脇役たちの名シーンを振り返ってみたい。

※本記事には作品の内容を含みます

■弟のために意地を見せる小兵二! 野球部エース・吉野との対決

 帝拳高校の番長は名目上、中田小兵二ということになっている。一番強い太尊が番長の座に興味を示さないため、目立ちたがり屋の小兵二が番長を自称している形だ。

 そんな小兵二の弟・三兵太が帝拳高校に入学し、エース・吉野に憧れて野球部入部を希望するのだが、小兵二は反対する。

 実は小兵二も元野球部だった。過去に自分のミスによって吉野の完全試合がなくなったことから因縁が生じ、両者は譲らず一打席勝負の対決をする。しかし、吉野の決め球・シュートに小兵二は三振。“頭を下げたら許してやる”と言われるものの、プライドを傷つけられ野球部を去っていた。

 三兵太は兄のプライドが傷つけられた理由を知り、自分が野球部に入って活躍し、兄のぶんまで見返してやると決意する。

 だが、小兵二のことを快く思わない部員2人は、“小兵二が土下座をすれば野球部に入れてやる”と言う。その話を聞いていた小兵二は弟のため土下座をするも、押し問答の末、兄弟愛に心を打たれた太尊が割って入り、三兵太の入部条件が吉野との一球勝負に決まる。

 そんな折、吉野たち野球部員が部室でタバコを吸っていたことが教師に見つかり、吉野は退部の危機に……。三兵太は憧れの吉野を守るため自分が吸ったと嘘をつき、謹慎処分となってしまった。

 これに憤った小兵二は吉野との勝負に挑み、鋭いシュートを見事にジャストミート。弟のため、意地の一打を放つ。吉野は小兵二にも復帰を促すが「バーカ 番長にスポーツは似合わねーよ」と、キメ顔を見せるのだ。なんともしびれる展開だった。

■嫉妬から太尊に挑戦…ネバーギブアップで意地を見せたヒロト

 先輩の太尊を尊敬して「殿」と呼んでいるのが、大場浩人(通称:ヒロト)だ。ヒロトは数々の強敵を倒してきた太尊の存在のおかげで「帝拳高校」が一目置かれていることに有頂天となっていた。

 ヒロトは自分の中学の後輩たちを同校に入学させようと促す。しかしその後輩が言った、“前田さんみたいな人がいると、何もしなくてもいいから楽”という言葉に、自分自身も太尊の力に頼って大きい顔をしていたことに気づき、自身に苛立つ。

 ヒロトは太尊の威光を借りずに勝負するため、別の学校の制服を着て他校に喧嘩を仕掛けるも劣勢に。そこに偶然通りかかった帝拳高校の生徒・山下勝嗣と沢村米示が助けに入ると、相手は帝拳の名に恐れをなして一目散に逃げてしまった。

 自分の苛立ちが何なのか分からなくなったヒロトは、中学の先輩で太尊のライバルである島袋大に相談する。すると「嫉妬だな 前田に対する そしてどーする事もできない 自分への怒りだ」と、答えを貰うのだ。

 意を決したヒロトは太尊にタイマンを挑む。だが、もちろん敵うはずもない。最後はチョークスリーパーを決められてしまい、ギブアップしろという太尊に対しても結局最後まで折れず、そのままダウンしてしまった。

 格下である自分にも本気で迎え撃ってくれる太尊に感謝していたヒロト。THE BLUE HEARTSの名曲『英雄にあこがれて』をバックに、涙を流して口から泡を吐きながらも意地を見せるヒロトが印象的だった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3