■産屋敷耀哉の覚悟を前に激しく動揺

 最後は、『柱稽古編』最終話である「柱・集結」。このときの無惨はもはやこれまでのアニメの中でも最も多く喋っていたのでは? と思うほどにセリフが多く、困惑していたのが印象的だ。

 この回は『無限城編』へと続く重要エピソードで、お館様の屋敷に訪れた無惨が当主の産屋敷耀哉と初めて邂逅する。耀哉はそこで一世一代の作戦として、自らとともに屋敷を爆発させた。

 これから自爆せんとする雰囲気を一切気取らせない穏やかさには、さすがの無惨も気味悪さを感じたようだ。焼かれた体を必死に再生しながら「あの男の顔、仏のような笑みを貼り付けたまま己と妻と子どももろとも爆薬で消しとばす。私は思い違いをしていた。産屋敷という男を人間に当てる物差しで測っていたが、あの男は完全に常軌を逸している」と素直な感想を述べている。

 無惨をもってして「常軌を逸している」と言わせたお館様の精神力は大したもので、他にも「腹黒」「あれだけの殺意をあの若さで見事に隠し抜いたことは驚嘆に値する」とある意味で賞賛とも取れるような言葉を口にしていた。

 このシーンでは、これまでにないほどの強い焦りを見せている無惨。彼にとってはよっぽど想定外の出来事だったようだ。

 圧倒的な力を誇る鬼舞辻無惨であっても、完璧とは程遠い。ふとした瞬間に垣間見える焦りや感情の揺らぎに、彼の隙があらわれている。そんな無惨のほころびが、鬼殺隊の一縷の希望になるのか、最終決戦に向かう『無限城編』がどのようにアニメで描かれるのか、期待が高まるばかりだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3