
三部作となる『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』の『第一章 猗窩座再来』の公開を、7月18日に控えた『鬼滅の刃』。今年の夏休みに、家族や友人と観に行く予定を入れている人も多いだろう。
『猗窩座再来』の本予告では、鱗滝左近次による「最終局面という言葉が何度も頭をよぎる」というセリフが使われているが、『無限城編』でいよいよ鬼舞辻無惨の本拠地に迫る鬼殺隊士たち。そんな彼らの前に立ちはだかるのは、猗窩座をはじめとする上弦の鬼たち。上弦の鬼の圧倒的な強さが描かれるとともに、さらにその上に君臨する無惨の暴力的な強さを目の当たりにすることになるだろう。
さて、鬼舞辻無惨といえば、上弦の鬼ですら畏れを抱く鬼の始祖だ。鬼の中で彼に並べるものはなく、これまでも気に入らない下弦の鬼を一度に粛清する通称「パワハラ会議」を行ったり、気まぐれに自身の血を与え仲間を増やしたりと、全てを好き放題にする姿がアニメでも描かれてきた。
そんな作中最強の無惨だが、これまでの『鬼滅の刃』では、一瞬ではあるものの、その冷静な顔を崩し焦りを見せたシーンがある。今回は、1000年以上生きてかなうものはないと思われる無惨を怯ませた、思わず見逃してしまうようなレアシーンを振り返りたい。
※本記事は作品の内容を含みます。
■「耳飾りの剣士」の面影にスイッチが入った無惨
まずは『竈門炭治郎 立志編』アニメ7話「鬼舞辻無惨」と、続く8話「幻惑の血の香り」。これらの回では浅草で、炭治郎が初めて無惨に接触する。自身の家に残っていた匂いを頼りに無惨を察知した炭治郎が、偶然出会った無惨の肩を掴むと、無惨は意外にも彼をさらりとかわし、その隣には妻子もいた。「こいつ、人間のふりをして暮らしているんだ」と愕然とする炭治郎をよそに、無惨は道ゆく人を鬼に変えてその場を後にするが、そのときしっかりと炭治郎のつけていた耳飾りに反応していた。
後のシリーズで分かることだが、無惨はかつて自分を倒さんとした「耳飾りの剣士」を想起したのだろう。その後、妻子と別れた無惨は道で偶然会った酔っ払いたちに絡まれ、「死んでいるみたいだ」と言われ逆上。憂さ晴らしをするかのように彼らを虐殺し、配下の鬼に炭治郎の暗殺を命令する。
人間として生活している無惨は、酔っ払いに素直に「すみません」と謝り、やり過ごそうとしたことからも、普段はできるだけ鬼だと勘付かれる行動は避けて生きているのだろう。にもかかわらず、3人もの一般人を派手に虐殺するに至った背景には、自身を揶揄されただけでなく、因縁のある耳飾りへの動揺をやり過ごせなかったからかもしれない。
感情が昂った結果、つい周りの人を殺してしまったという冷静さを欠いたシーンは他にもある。『刀鍛冶の里編』の最終話「繋いだ絆 彼は誰時 朝ぼらけ」ではついに禰󠄀豆子が太陽を克服する。自身はどれだけ探しても太陽を克服するための青い彼岸花を見つけることはできなかったのに、禰󠄀豆子が自らの力で太陽を克服したことを察した無惨は高揚する。
このときは使用人もいる裕福そうな家で、「俊國」という少年の姿で生活していた無惨だが、動揺とも喜びともしれない感情をあらわにし、その勢いのまま家人を皆殺しにした。これほど裕福そうな家なのだから、この惨事と行方不明とされるであろう「俊國」のことは翌日にでも大きくニュースに取り上げられてしまいそうだ。