■見た目からは想像できないシリアス極まりない生い立ち…ベンキマン

 奇抜な見た目、強烈なネーミングで存在感を放ったのが「超人オリンピック ザ・ビッグファイト編」にて登場した「ベンキマン」だろう。その名の通り、腹部が和式便器というインパクト大の姿をした彼だが、読切漫画『キン肉マン外伝  ベンキマン 〜失われたインカの記憶〜』にて、意外なルーツが描かれた。

 物語の舞台となるのは、超人オリンピック ザ・ビッグファイトのペルー予選。当時、ベンキマンは自分の過去について記憶を失っており、頭部のオブジェクトの形状から超人レスラー「エラード(ソフトクリーム)マン」と名乗っていた。

 クリーンな戦い方を見せつけ、ときに少年を助けるなど好人物だったエラードマンだが、物語の中盤、危篤の祖父から思いがけない真実が明かされる。

 なんと彼の正体は、過去に繁栄を築き上げた古代インカ帝国を守る「ベンキーヤ一族」の警護超人だった。大昔、スペイン侵攻のさなかエラードマンの両親は殺され、彼自身もその衝撃により記憶を失っていたというのだ。

 これがきっかけで過去を取り戻した彼は決勝戦にて覚醒。極悪非道なヒガンテマンを大技「ベンキ流し」にて撃破し、大勢の観衆が見守るなか堂々と「ベンキマン」と名乗りを上げたのである。

 イロモノキャラだと思っていたベンキマンが、数百年を超える壮大な歴史と過去を背負っていたとは……実に驚きである。

 

 相手のことを顧みない苛烈な攻撃を得意とする残虐超人たちだが、本編や外伝作品にて、その意外な過去が明らかにされている。

 世間からの迫害、耐え難い怒りの衝動、大昔に失われていた記憶……本来は心優しき人物であったが、理不尽な過去から残虐超人の道を歩むことになってしまった者も多い。

 残虐で奇抜なファイトスタイルに目を奪われがちだが、彼らのルーツとなるエピソードを読み解くことで、その見え方が少し変わってくるかもしれない。

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