ウォーズマンにカレクック、ベンキマンも…『キン肉マン』残虐超人たちが「残虐になった知られざるワケ」の画像
『キン肉マン』ウルトラディテールフィギュア No.659 UDF [ウォーズマン](キン肉マン 公式オンラインストア)© YUDETAMAGO

 漫画家・ゆでたまご(原作:嶋田隆司氏、作画:中井義則氏)のデビュー作であり、その高い人気から今もなお新たな物語が描かれ続けている、大人気漫画『キン肉マン』。

 プロレス漫画の金字塔とも呼ぶべき伝説的な作品で、主人公のキン肉マンをはじめ、さまざまな能力を持つ超人たちが手に汗握る白熱のバトルを繰り広げていく。

 「正義超人」「完璧超人」など、立場ごとにカテゴリー分けされている超人たちだが、なかでも「残虐超人」と呼ばれる超人たちは、その名の通りほかとは一線を画す卑劣な戦い方で、対戦相手を苦しめてきた。だが、そんな悪役を担う彼らにも、残虐になってしまった理由があったことをご存じだろうか。

 さっそく残虐超人たちの背後に隠された、意外な過去を紐解いていこう。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■優しきロボ超人に降りかかる不幸の数々…ウォーズマン

 残虐超人たちのなかでも、その独特のキャラ設定や活躍から人気が高いのが、機械の体を持つ「ウォーズマン」ではないだろうか。

 ソビエト連邦(ロシア)出身の彼は、メットや仮面、鎧も黒一色の出で立ちが特徴で、超人オリンピックにて姿を現わした。鍛え上げた肉体はもちろん、拳に内蔵された鉄の爪ベアー・クローを用いた容赦のない攻撃が持ち味だ。

 そんなウォーズマンがなぜ残虐超人へと変貌していったのか……作中では、その壮絶な過去が語られていた。

 人間の母と機械超人の父の間に生まれ、ニコライの名を与えられたウォーズマン。超人・人間・ロボットの因子を兼ね備えた「ロボ超人」として誕生した彼だが、父から受け継いだ機械の顔がきっかけで幼少期のころから周囲から虐げられていた。

 袋をかぶって顔を隠し、荒んだ生活を続けるニコライ。それでも両親を恨まず、まっすぐな心を忘れずに日々を過ごしていたのだが、早くに父が亡くなり、心の支えであった母までも病で失ったことで天涯孤独の身となってしまう。

 母の死から月日が経ち、屈強な男性として成長したニコライは、超人レスラー育成施設「狼の部屋」にてバラクーダことロビンマスクに才能を見出され、ウォーズマンの名と現在の姿を与えられることとなる。

 彼はこれまでの不遇さを跳ねのけるかのように身に着けた力でほかを圧倒し、蹂躙する戦闘スタイルを確立していったのだ。

 特殊な生い立ちにもめげず幼少期を過ごしていったニコライだが、彼に待っていたのは周囲からの差別や、両親との決別というあまりにも非情な現実の数々だった。残虐なファイトスタイルに戦慄するとともに、彼が味わってきた不遇極まりない過去に思わず胸を締め付けられてしまう。 

■忌避した怒りに突き動かされた悲しき超人…カレクック

 『キン肉マン』には個性的なビジュアルの超人たちが多く登場しているが、頭にカレー皿を乗せた奇妙な見た目でファンを驚かせたのが「世界三大残虐超人」の一人「カレクック」だろう。

 彼がなぜ残虐超人と呼ばれるようになったのか……その経緯が外伝作品『キン肉マン 超人列伝 カレクックの巻 -愛と怒りの聖人-』のなかで紐解かれている。

 この作品では、彼が流派「頭載格闘術(マーラレスリング)」を極めるため、修行者・シンとして厳しい修行に励んでいた過去が描かれている。

 もともと怒りに支配されやすい弱点を持っていたシンは、心の弱さを克服するため一年間の修行の旅へと出発する。その道中、彼はカレー屋台を営む人間の女性・ミーナと出会い、介抱してもらったことでその優しさに一目惚れをしてしまう。

 だが、ミーナの住む村は悪行超人・ケンブリッジマンの一派が蛮行を働いており、彼女もまたその不当な暴力によって虐げられていた。

 師の教えに従い我慢を続けていたシンだったが、ミーナの店にまで手を出されたことで、ついに限界を迎えてしまう。

 彼は「頭載格闘術」における怒りの象徴・カレーライスを頭に載せ、怒りに任せてケンブリッジマンたちを惨殺してしまったのだ……。村から脅威を排除したものの、圧倒的な暴力を行使した彼を賞賛する者は誰一人いなかった。

 この出来事をきっかけに、彼は心優しきシンではなく、カレーを頭に載せた残虐超人・カレクックとして生きることを決めたのである。

 優しさから弱き者たちを救おうと奮闘した彼だが、その怒りは護り抜いた者たちにすら恐怖を与え、彼を孤立させることになってしまったのだ。

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