■人気キャラの早すぎる退場劇『仮面ライダーエグゼイド』九条貴利矢
2016年から放送された「平成仮面ライダー」シリーズ第18作『仮面ライダーエグゼイド』。本作に登場する九条貴利矢(仮面ライダーレーザー)は、飄々とした軽妙なキャラクター性と優秀な監察医としての実力を兼ね備えた人気キャラで、物語の核心に迫るキーマンとして活躍していた。
しかし、そんな貴利矢に待ち受けていたのが、あまりにも唐突で容赦のない最期だった。
第12話、ゲーム病の真相にたどり着いた貴利矢は、ほかのライダーたちに真実を伝えようと招集をかけるが、その直後、仮面ライダーゲンム ゾンビゲーマーに変身した檀黎斗の襲撃を受ける。なすすべもなく一方的に叩きのめされ、変身も解除……。駆けつけた宝生永夢(仮面ライダーエグゼイド)にも真実を伝えることができないまま、激しい大雨の中で静かに消滅していくのだ。
しかもこのエピソードが放送されたのは現実世界の12月25日。タイトルも「クリスマス特別編 狙われた白銀のXmas!」というもので、前半はサンタ姿のライダーやパーティシーンなど明るい演出が続く。ところが後半で一転、人気キャラの命が奪われるという落差の激しい構成となっていた。この急転直下の展開も相まって『エグゼイド』屈指の衝撃回として、今なお語り継がれているエピソードだ。
ちなみに、先に紹介した草加とザンキの退場劇も、それぞれ新年一発目の放送回、クリスマス放送回に描かれており、仮面ライダーシリーズの「衝撃回」はなぜか年末年始に集中しているのも興味深いところだ。
なお貴利矢は、物語終盤で「復元」という形で再登場を果たす。それもラスボス・檀正宗の側近として姿を現すという、これまた視聴者を驚かせる展開が待ち受けていた。
今回紹介したライダーたちの退場劇は、いずれも子ども向け番組とは思えないほど重く、容赦のない衝撃的な退場劇であった。
だが、その衝撃こそが各作品のテーマやキャラクター同士の関係性をより際立たせ、『仮面ライダー』シリーズに一段と厚みと深みを加えているように思う。華やかな変身や必殺技はもちろん、シビアでドラマ性の高い展開があるからこそ、子どもだけでなく大人の心も惹きつけてきたのだろう。
「衝撃の退場劇」に、このシリーズが長年にわたって愛され続けてきた理由のひとつを感じた次第だ。