「生々しい最期が忘れられない…」平成『仮面ライダー』ヒーローたちの重すぎる「退場劇」 草加雅人、ザンキに九条貴利矢も…の画像
『仮面ライダーファイズ パラダイス・リゲインド』(C)2024 石森プロ・バンダイ・東映ビデオ・東映 (C)石森プロ・東映

 1971年の放送開始から令和の今に至るまで、長年にわたって多くの子どもたちに親しまれてきた『仮面ライダー』シリーズ。華やかな変身、痛快なバトル、そしてベルトをはじめとするギミック満載の魅力的なアイテムの数々は、今も昔も子どもたちを虜にしてしまう。

 しかしその一方、子ども向け番組とは思えないほど、残酷で容赦のない「退場劇」が描かれてきたのもまた事実である。視聴者の心に深く刻まれるこうした衝撃展開も、本シリーズの魅力でもあると言えるだろう。

 今回は、数あるエピソードの中でも特に強烈な印象を残した「衝撃的な退場劇」にスポットを当ててみた。信念や宿命の果てに訪れたライダーたちの最期を、あらためて振り返っていきたい。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■信念の果てに…首を折られた男『仮面ライダー555』草加雅人

 2003年から放送された、「平成仮面ライダー」シリーズ第4作『仮面ライダー555』。本作における草加雅人(仮面ライダーカイザ)の退場シーンは、シリーズの中でも屈指の衝撃的な死として、今なお語り継がれている。

 草加は登場初期から自己中心的で毒舌、協調性ゼロといった強烈なキャラクター性を放ち、敵味方問わずトラブルの種となる存在だった。だがその反面、愛する園田真理のためなら何でもするという一貫した信念を持ち、単なる「嫌われキャラ」では終わらない魅力を持っていた。

 そんな草加の最期が描かれたのは、最終回直前の第48話、その名も「雅人、散華」というエピソードでのこと。

 人質となった真理を救うため、草加はカイザとして単身敵地へと乗り込むも、返り討ちに遭い、海岸に倒れ込んでしまう。そこに現れたのは、カイザギアを奪い変身した木場勇治(ホースオルフェノク)だった。

 木場は草加の首根っこを掴み持ち上げると、次の瞬間「バキッ」という生々しい効果音とともに、その首をへし折ってしまうのだ。草加は目を見開いたまま絶命……最終回で登場することなく物語から姿を消すのだった。

 自己中心的な言動で物語を混乱させ続けた草加だったが、その裏には、貫き続けた信念と覚悟があった。そんな彼が愛する者に言葉を遺すことすら許されず、無言の一撃で命を絶たれるという結末は視聴者に強烈なインパクトを与えた。

 草加の死は「平成仮面ライダー」のシビアで陰鬱な世界観を象徴する、忘れがたい退場劇のひとつである。

■弟子を案じ、そして“永遠の闇”へ『仮面ライダー響鬼』ザンキ

 2005年から放送された「平成仮面ライダー」シリーズ第6作『仮面ライダー響鬼』に登場するザンキ(仮面ライダー斬鬼)も、壮絶な最期を遂げたキャラクターである。

 かつてはヒビキ(仮面ライダー響鬼) と並ぶ熟練の「鬼」として第一線で戦っていたザンキだが、魔化魍との激闘で重傷を負い、現役を引退。その後は弟子のトドロキを一人前の戦士に育てるため、サポート役に徹していた。

 しかし終盤、そのトドロキが重傷を負い、再起が難しい状態になってしまう。ザンキは、自身の肉体がもはや変身に耐えられないことを承知のうえで、再び斬鬼として戦場に舞い戻るのだった。

 そして第44話「秘める禁断」にて、ザンキは大量発生した魔化魍相手に戦い続け、ついに力尽きてしまう。変身が解除された彼は砂浜でうつ伏せの状態で絶命……しかも一糸まとわぬ状態というショッキングな姿も相まって、その無残な光景は多くの視聴者の記憶に深く刻まれた。

 だが、衝撃はそれだけにとどまらない。なんと次のシーン、病床で目覚めたトドロキの前に死んだはずのザンキが再び姿を現す。そして続く第45話「散華する斬鬼」では、彼が「返魂の術」という禁断の呪法を使い、一時的に魂を肉体に留めていたことが明かされる。これらの行動すべては、気がかりでならない弟子を見届けるためのものだったのだ。

 ザンキの想いに応え、奇跡的に回復したトドロキは再び鬼に変身。師弟は最後の共闘を果たし、ザンキの魂は術の代償として、“永遠の闇”へと静かに消えていった。

 最期の瞬間まで弟子を案じ、命を懸けて戦い抜いたザンキの姿は『響鬼』で色濃く描かれた“師弟の絆”というテーマを体現する名シーンであった。シリーズの中でも特に美しく、哀しく、そして忘れがたい退場劇である。

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