
荒木飛呂彦氏の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』を原作とするアニメシリーズ最新作として、原作第7部が『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』のタイトルでアニメ化されることが発表された。
1986年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が始まった、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』では、ストーリーの過程で敵味方問わずたくさんのキャラが命を落としてきた。その容赦ない展開こそが、第1部「ファントムブラッド」のキャラクターであるウィル・A・ツェペリのセリフであり、作品テーマだと言われている「人間讃歌」をより印象付けるのだろう。
しかし中には、これまで作中でメイン級の活躍をしていたのに命の散り際があまりにあっさりと描かれ、読者に衝撃を与えたキャラも少なくない。今回は、結果的に敵キャラのとんでもない強さの表現に使われることとなってしまった、「重要キャラなのにあっさり死んでしまった」悲しいキャラを振り返っていきたい。
※本記事は作品の内容を含みます。
■2度目の死であまりにもあっさり「消えた」
まずは3部「スターダストクルセイダース」に登場するモハメド・アヴドゥル。物語の序盤から登場する重要キャラであり、ジョセフ・ジョースターの友人の占い師で生まれながらのスタンド使いの彼は、ジョースター一行として一緒に旅をしてきた。
アヴドゥルは旅の途中で、ホル・ホースとJ・ガイルのペアによって一度は死亡した演出がとられた。だが、彼は実は死んでおらず、のちの審判(ジャッジメント)戦で復活を果たす。それだけにアヴドゥルの“2度目”の死亡シーンのあまりのあっけなさには驚いた読者も多かっただろう。
彼を手にかけたのはラスボス・DIOの配下であるヴァニラ・アイスだ。彼のスタンド「クリーム」はあらゆるものを暗黒空間に飲み込み、一瞬で粉微塵に破壊するという凶悪なもの。アブドゥルは突如襲いかかった攻撃からポルナレフとイギーを助けるため、咄嗟に2人を突き飛ばす。そして自分は両二の腕から先だけを残し、暗黒空間に飲み込まれてしまった。
腕だけ残った姿は、「死んだ」というより「消えた」と感じるほどあっさりしたもの。たった数コマで、本格的な戦いが始まる前に見せ場もなく、遺言を残すこともできず消えてしまったアブドゥルの死はにわかには信じがたかった。戦いの後、同じくこの戦いで命を落としたイギーとともに天に登っていく姿が描かれている。その死亡テロップによって、初めて彼の死を実感したという人も多いのではないだろうか。
ラスボスでないヴァニラ・アイスがここまで強いとなると、一体DIOはどれだけ強いのか。アブドゥルの死は、次のラストバトルに向けて、読者の恐怖を最高潮に高めるものだった。
『ジョジョ』では、このようにラスボスの存在感を強調するように、味方の重要キャラが前触れなく命を落とす展開が描かれることが多い。5部「黄金の風」の、ジョルノ・ジョバァーナと同じ護衛チームの一人ナランチャ・ギルガも、そうした最期を迎えた一人だ。
個性豊かな護衛チームの中で最も無邪気でムードメーカーの1人であるナランチャ。これまで仲間とともに激闘を潜り抜けてきたが、物語のカギを握る「矢」へとたどり着く寸前にラスボス・ディアボロの攻撃を受け、次のコマで鉄格子に刺さって死亡した姿が描かれた。
まだディアボロの能力の恐ろしさが読者に明かされていない中での最終決戦直前。いわば“前座的な死”とも呼べるもので、たっぷり悲しむ余裕もないまま緊張感が高まり、混乱のままラストバトルが始まっていった。歴代『ジョジョ』でも屈指の、あっけない死のひとつだろう。